特集に寄せて

アズビル株式会社
アクチュエータ開発本部
高野 智宏

私たちアズビルは,1906年の創業時に掲げた「人間の苦役からの解放」という理念を,現在のグループ理念「人を中心としたオートメーション」へと受け継ぎ,ビルディングオートメーション,アドバンスオートメーション,ライフオートメーションの領域で約120年にわたり事業活動を続けてまいりました。事業を継続するためには,基盤技術である「計測と制御」を確立し,それを活かしたオートメーション関連の製品やサービスを提供することが不可欠です。パンデミックの発生などの突然の社会的変化や,急速な技術革新への対応はもちろん,常に技術レベルの向上に努め,今後も継続的な成長を目指します。

1906年の創業時の精神「人間の苦役からの解放」を原点とする「人を中心としたオートメーション」をグループ理念に掲げ,事業領域としては,主に大型建物の空調制御等を行う「ビルディングオートメーション事業」,製造業の生産に必要なシステム・機器等を提供する「アドバンスオートメーション事業」,ガスや水道等のライフラインに関連する「ライフオートメーション事業」と,社会・産業・生活の多分野に及んでいます。

今回の特集テーマである「バルブ・アクチュエータ」は,アズビルの「計測と制御」の基盤技術の中でも,主に「制御」を担う主要製品です。過去を振り返ると,アズビルは工業系市場を中心に,1936年には当時輸入品が主流だった調節弁の国産化を初めて開始し,1964年には世界初のケージ弁の独自開発に成功しました。その後,空調市場向けにも1967年にグローブ形調節弁のV506xシリーズを開発し,国産化したモジュトロールモータをアクチュエータ部に搭載しました。さらに,1992年には空調設備の小型化や現場での組付け・調整不要といったニーズに対応した回転弁「アクティバル™シリーズ」を開発し,以後シリーズとして様々な機種を展開してきました。こうした歴史を持ち, 「バルブ・アクチュエータ」においては,お客さまから一定の評価をいただいているものと自負しております。

事業継続のためには,お客さまに満足いただける製品を提供し続けることが必要であり,そのために何が求められるかを常に考えています。また,それを実現する技術力も不可欠です。

バルブについては,機械系を中心とした幅広い技術要素が求められますが,特に流体に関する技術が重要です。制御バルブの主な機能は,微小な流量から大流量まで精密にコントロールできることですが,様々な使用条件下ではキャビテーション(液体中の圧力変動によって気泡が発生・崩壊し,騒音や損傷の原因となる現象)が発生することもあります。そのため,製品の最適構造を導くには,流体シミュレーションによる解析や可視化技術を活用し,実機での実証テストを行うことが必要です。アズビルでは,長年にわたり大学との共同研究や公共機関の協力を得ながら技術を培ってきました。2022年にはグローバル規格に準拠した高圧条件下での試験を可能とした調節弁流量試験設備をアズビル京都株式会社内に構築しました。

アクチュエータについては,アズビルでは主として空気式と電動式に分かれます。空気式は特に工業系市場で防爆用途に適し,グローブ弁などのリニア動作型に多く採用されています。電動式は空調用途で小型・軽量といった特徴があり,回転弁を中心に採用され,駆動源として電気モータを使用し,減速機構を介してバルブを動作させます。主な技術としては,樹脂から金属まで多様な材料を用い,歯車やリンク機構などの機械要素部品を使用するため,材料やメカニズムの解析が中心となります。また,駆動源や開度検出に加え,高機能化対応機種で使用する状態認識には,電気的要素も含めたメカトロニクス技術が不可欠です。

今後の取組みについては,バルブ・アクチュエータの「流量制御」という基本機能の提供はもちろん,さらに発展させることを考えています。一つは,従来の技術を深化させ,現行製品に新機能を搭載することで,より高機能な製品・サービスを提供することです。例えば,流量計測制御機能付アクティバルは,既存製品にバルブ内部の流体状態解析技術を活用し,流量や熱量を同時に計測する機能を付加したものです。アズビルが強化しているAI技術なども活用することで,新たな製品開発に取り組んでいます。もう一つは,アクチュエータの原点に立ち返り,培ってきた「動かす技術」を活用し,従来の事業分野にとらわれず新しい市場も視野に入れた製品化にチャレンジします。これには,柔軟なオープン・イノベーションの思想に基づき,社外との連携も視野に入れた活動となります。

今回の特集では,アズビルの「計測と制御」の技術基盤から,バルブ・アクチュエータに関連する技術開発事例および実際の製品開発事例をご紹介します。これらはすべて,azbilグループが目指す持続可能な社会への貢献に直結するものと確信しております。技術は進化を続けておりますが,今後はさらにそのスピードが加速すると考えられます。現状の技術に満足することなく,常に新しい画期的な技術習得を目指す探求心を大切にし,研究開発・製品開発に取り組んでまいります。

本特集に限らず,アズビルの探求心あふれる取組姿勢が少しでもお伝えできれば幸いです。

この記事は、技術報告書「azbil Technical Review」の2026年04月に掲載されたものです。