建物管理システムsavic-net FX2
読売新聞ビル
挑戦から生まれた脱炭素の新たなアプローチ 運用改善と蓄熱DRの成果
竣工初年度から継続的な省エネ・運用改善に取り組んできた読売新聞ビル。すでに高い省エネ水準に達していた同ビルにアズビルは設備データの分析を基にさらなる省エネルギーの可能性を提示。省エネ支援サービスによりお客様とともに検証と改善を重ね、2023年からは蓄熱槽を使ったディマンドリスポンス(蓄熱DR)による再生可能エネルギー(再エネ)活用へと、脱炭素化の新たな価値創造に貢献しています。

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導入製品・サービス
savic-netFX ビルマネジメントシステム
「やり切った」と考えていた省エネルギーにさらなる改善余地を発見
読売新聞東京本社では、2023年4月のGXリーグ※1加盟にあわせて脱炭素に向けた目標を掲げ、取り組みを進めてきました。
「脱炭素について新聞社として世の中に発信しているので、どこに出しても恥ずかしくない施策を打つ必要があると考えています」(岩井氏)
取り組みの基本に据えているのが、省エネルギーと運用改善です。まず建物で使うエネルギーを減らし、再エネを取り入れること。新聞社の業態はオフィス利用時間が部署ごとに異なります。ビルの熱源設備も複数の方式を組み合わせているため、省エネには、快適な執務環境を維持しながら運転を細かく調整する必要があります。
一方で、「空調を調整する場合、利用者への説明と合意形成に相応の時間を要します」(栗正氏)
同ビルでは竣工初年度からコミッショニング※2を継続しており、省エネルギーはすでに一定の水準に達しています。そうした中、2022年にアズビルは、熱源設備の運転データを分析し、運用改善のコスト削減を数値化した、省エネ支援サービスを提案しました。
「長年運用改善を続けてきただけに、まだこれだけ削減できる余地があるのか、という驚きがありました。そこで、まずは単年度で導入し、その効果を確認することにしました」(岩井氏)
2023年から改善に着手すると、アズビルの見込みとほぼ一致するコスト削減効果がみられました。この成果によって、2024年から複数年の省エネ支援サービスへ発展します。
「アズビルに省エネチューニングに入ってもらうことで、新たな改善余地が見つかりました。設備運用の知見とデータの分析力は本当にすごいと実感しています」(福岡氏)
CO2排出量を約30%削減、そして新たに見えてきた課題
アズビルとは定期的に打合せを行い、省エネ対策のリスクと効果について説明を受けました。こうして2014年以降に積み重ねてきた施策から、2022年より省エネ支援サービスを実施することでさらに効果を発揮し、2025年時点で2016年比CO2排出量は約30%削減されました。
「アズビルの伴走なくしては、現在のような高いレベルでの省エネ対策の実現は難しかったと思います」(栗正氏)
出典:読売新聞東京本社提供資料より作成
一方、省エネルギーが進んだからこそ見えてきた課題もありました。読売新聞東京本社では、再エネ調達の拡大に向け、オフサイトコーポレートPPA※3の導入を検討。しかし、省エネによって日曜日・祝日の日中の電力需要が大きく減少していたため、太陽光発電による再エネを十分に受け入れられない可能性があることが分かりました。
使用量の「削減」に加え、再エネを有効活用するため、読売新聞ビルに設置している蓄熱槽※4を使った「上げDR」※5に着目しました。再エネが余りやすい日中に蓄熱運転を行い、電力を建物側で受け入れることができます。
そこでアズビルでは、お客様や東京電力エナジーパートナーをはじめとする関係者と検討を重ね、蓄熱DRアプリケーションを導入。簡単な操作で翌日の蓄熱DRを実行できる仕組みを2025年3月に構築、効果検証を開始しました。
「設備としては手動でも動かせますが、それでは日々の運用が現実的ではありません。できるだけ簡便な操作で蓄熱DRが実現できるよう、アズビル担当者と調整を重ねました」(鈴木氏)
実現した仕組みは、日々の運用を担う現場の負担軽減にもつながっています。
「最初は、DRの運用は大変なのではという不安もありました。実際には必要な数字を入れてワンクリックするだけです。全く業務を圧迫することなく運用できています」(米田氏)
蓄熱DRは2026年3月から本格運用を開始、余剰再エネの吸収効果については、今後さらに実績を積み重ねながら検証していく段階です。蓄熱DRはそれ自体で省エネルギーやコスト削減を目指すものではありません。使用量を「減らす」取り組みから、再エネを有効に「使う」、さらに需給を「調整する」取り組みへ。読売新聞ビルの脱炭素は、建物単体の省エネルギーからGXへと次の段階に進み始めています。
「やり方が分かってしまえば、現場でも次の調整に向けて蓄熱DRに前向きに取り組めるようになりました」(木村氏)
日々の蓄熱DR運用は、アズビルの蓄熱DRアプリケーションから容易に設定できる。
現在の蓄熱DRの運用状況について熱源サマリを表示・確認することも可能。
取り組みが評価され その先のGXに向けた挑戦へ
こうした積み重ねは外部からも評価され、読売新聞ビルは、2025年度の公益社団法人 空気調和・衛生工学会「第26回特別賞十年賞」※6を受賞しました。省エネチューニングの効果や蓄熱槽を活用して休日のデマンドを引き上げる「上げDR」への着手など、脱炭素に向けた継続的な取り組みが評価の対象となっています。
*一次エネルギー消費原単位とは、延床面積1m²あたりの年間一次エネルギー消費量。省エネルギーそのものの効果を示す指標として用いられる。読売新聞ビルでは、竣工初年度(2014年度)の1,717MJ/m²・年から2024年度は1,111MJ/m²・年となり、35%削減した。
出典:空調衛生工学会 特別賞十年賞資料より作成
「自分たちに特別な力があったわけではなく、プロの力を上手に借りられたので、ここまでの成果を出せたのだと思います」(岩井氏)
さらに、読売新聞東京本社と読売不動産では、読売新聞ビルで培った知見を生かしながら、ほかの保有物件についても省エネ・運用改善を進めていく考えです。蓄熱DRも運用データを積み上げ、再エネをより有効に活用するための取り組みとして、その可能性を広げていきます。
「他の社有物件にも同水準の省エネチューニングを施していきたいと思います。さらなるカーボンニュートラル実現に向けて取り組んでいきたいですね」(岩井氏)
※savic-net、savic-net FXは、アズビル株式会社の商標です。
用語解説
※1 GXリーグ
2050年のカーボンニュートラル実現を見据え、GX(グリーントランスフォーメーション)に積極的に取り組む企業群が、官・学とともに経済社会システム全体の変革や新たな市場の創造に向けて協働する任意の組織。
※2 コミッショニング
建物の設備が設計の意図どおりに性能を発揮しているかを検証し、運用段階でも継続的に改善していく取り組み。
※3 オフサイトPPA(コーポレートPPA)
コーポレートPPA(Power Purchase Agreement:電力購入契約)は、企業が再エネ電力を発電事業者から長期にわたって固定価格で購入する契約。オフサイトPPAとは、遠隔地の発電所から一般の送配電網を介して電力を調達する形態を指す。
※4 蓄熱槽
電気を熱に変換して、空調用の熱を貯めるための水槽。大規模ビルの地下などに設置され、従来は、電力の需要が落ちる夜間の電力で作った冷熱や温熱を蓄えておき、日中に放熱して冷暖房に使うという運用が標準的。
※5 ディマンドリスポンス(DR)
送配電網全体の電力需給状況に応じて、利用者自身が使用する電力量を調整することで、電力の需給をバランスさせる取り組み。従来は電力需給がひっ迫する時間帯に使用量を下げる「下げDR」が主流だったが、近年は再エネ電力が供給過多となる時間帯に使用量を上げる「上げDR」も、省エネ法改正等による電力需要最適化対策として国が提言するエネルギー施策のひとつに位置づけられている。
※6 「第26回特別賞十年賞」
竣工後10年を経過し継続的な調査や適切な維持管理・改善によって省エネや良好な環境を保ち続けている設備・施設を顕彰する制度。第26回受賞者には、読売新聞東京本社、読売不動産、日建設計、日建設計総合研究所とともにアズビルも名を連ねている。
お客さま紹介

不動産センター
部長
岩井 茂雄 氏

取締役 技術本部長
栗正 康宏 氏

不動産本部
工務部長
福岡 一弥 氏

技術本部 技術部 新聞ビル2課
課長
木村 正人 氏

技術本部 技術部 新聞ビル2課
主任
米田 誠 氏

技術本部
エネルギー担当
鈴木 浩史 氏
読売新聞ビル

- 所在地/東京都千代田区大手町1-7-1
- 竣工/2013年10月
- 概要/地上33階、地下3階、塔屋2階、建築面積3,612.69m²、延床面積89,650m²、高さ200m
この記事は2026年10月に掲載されたものです。


















































































