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松菱金属工業株式会社

製造設備で発生する廃熱を活用し、エネルギー使用量の大幅削減を実現

新日鐵住金の特殊鋼棒線の加工拠点として、自動車部品のもととなる鉄鋼2次製品を製造する松菱金属工業。同社は、コンプレッサの高効率化に加え、加熱工程で使った蒸気や、洗浄槽からオーバーフローした温水などを回収して再利用する廃熱利用の仕組みを構築しました。これにより、電気、ガスなどのエネルギー使用量を大幅に削減しています。

建物分野 その他(市場・産業) 省エネルギー エネルギーマネジメント 中央監視システム

導入製品・サービス

小型集中管理パネルSmartScreen

機器更新などを中心に展開してきた省エネ施策にやり尽くした感

1947年に創業した松菱金属工業株式会社は、新日鐵住金株式会社の特殊鋼棒線加工拠点として、自動車の部品となる鉄鋼2次製品である磨棒鋼(みがきぼうこう)※1や冷間圧造用鋼線(れいかんあつぞうようこうせん)※2、素形製品を製造しています。これらは、自動車のエンジン、ミッション、足回り関係、ブレーキ、ステアリングなどのパワートレイン関係、スターターやエアコンのコンプレッサといった電装系の部品となるものであり、今日のモータリゼーションを根底で支えている製品です。

自動車製造において、新日鐵住金の製品製造は1次加工であり、松菱金属工業が担う製品製造は2次加工、松菱金属工業の顧客企業が行う自動車部品の生産は3次加工という関係になります。その中で、単なる2次加工ではなく、同社の顧客企業の工程により近い、いわば“2.5次加工”という領域に踏み込み、自動車部品加工のしやすい製品づくりを行うという付加価値の提供に努めていることが松菱金属工業の強みです。その工程を担っているのが、省エネ法の定める第二種エネルギー管理指定工場である同社の第二工場です。

社会的に環境保全の要請が高まる中、省エネルギーは同社にとっても重要な課題です。工場におけるCO2排出削減は、コンプライアンス上も切実な課題となっています。

「当社では、2003年6月にISO14001※3を取得するなど、以前から環境負荷軽減の取組みを続けてきました。特に第二工場においては2005年からの3年間、照明の高効率化を手始めに、変圧器など電気関係の設備を高効率タイプのものに置き換えるといった施策を順次展開してきました。しかし、その後は打てる施策も尽き始めていました」(森本氏)

蒸気やオーバーフロー水を回収、廃熱の有効利用で省エネルギーを図る

更新に合わせて工場内に分散して設置されていたコンプレッサを1カ所に集中設置した。老朽化を待たずに積極的に更新したことで、ランニングコストの早期削減も可能となった。

更新に合わせて工場内に分散して設置されていたコンプレッサを1カ所に集中設置した。老朽化を待たずに積極的に更新したことで、ランニングコストの早期削減も可能となった。

そこで松菱金属工業は、新たな省エネ施策の可能性を探るべく、それまで一貫して同社の省エネ活動を支援してきたアズビル株式会社に相談しました。これに対しアズビルから提案されたのが、第二工場にある被膜設備の廃熱を利用してエネルギーの削減を図ることでした。

「これまでの省エネ施策は、機器更新による対策が主でしたが、アズビルの提案は生産工程に踏み込んだものでした。その説明には十分な説得力があり、確実な省エネ効果を期待できるものと確信しました」(高橋氏)

「各加工工程で用いる圧縮空気をつくり出すコンプレッサについても、高効率化を同時に提案してくれました。コンプレッサは耐久年数から考えると、まだ更新の時期ではありませんでしたが、最新機種に更新することで省エネルギーを実現し、CO2排出量を削減できることが分かりました。また、一連の施策と併せて実施することでエネルギー使用合理化事業者支援事業※4に採択される可能性が高まるとアズビルからアドバイスもありました」(森本氏)

アズビルの提案を採用した同社は、2012年9月にエネルギー使用合理化事業者支援事業の採択を受けました。更新作業は夜中の3時からの4時間という工場が稼働していない時間帯や土日を使って行い、同年12月に工事が完了。2013年1月から新システムの稼働を開始しました。

被膜設備とは、製品を出荷直前に洗浄し、出荷先で同社の顧客企業がプレス加工しやすいように、表面に潤滑被膜をコーティングする設備です。希硫酸、水、被膜液で満たされた大型の洗浄槽の中を、製品が通過することで処理が行われます。このとき、槽内の各液体は60~90℃に保たれていなければなりません。そこで、槽内には配管をめぐらせて、その中にボイラでつくった蒸気を常に流し槽内の液体と熱交換することで、温度を維持するようにしています。

「以前は、配管を通過した蒸気のドレンはすべて下水として処理していました。それを、アズビルの提案により、ドレンを回収し、再び蒸気送出のプロセスに回すという仕組みに変えました。ドレンが持つ余熱を再利用することで、ボイラの稼働負荷を低減できるわけです」(高橋氏)

同様にこれまで下水として処理されていた、洗浄槽からオーバーフローした温水についても、再度くみ上げて浄化処理を行ったあと、槽内に戻す仕組みを実現。温水の熱を効果的に再利用するようにしました。

さらに同社では、高効率タイプに更新したコンプレッサの稼働状況や、被膜設備での熱回収の状況をモニタリングするため、簡易監視システムSmartScreen™も併せて導入しました。

オーバーフロー水の浄化設備。洗浄槽からオーバーフローした温水は凝縮沈殿槽、pH調整、砂ろ過などの設備を経由して再び洗浄槽に戻される。

オーバーフロー水の浄化設備。洗浄槽からオーバーフローした温水は凝縮沈殿槽、pH調整、砂ろ過などの設備を経由して再び洗浄槽に戻される。

洗浄槽からオーバーフローした温水をくみ上げるためのパワートラップ。被膜工程で利用されている蒸気の一部によって駆動するため、防爆処理や電気式のような配線が不要であるなどのメリットをもたらしている。

洗浄槽からオーバーフローした温水をくみ上げるためのパワートラップ。被膜工程で利用されている蒸気の一部によって駆動するため、防爆処理や電気式のような配線が不要であるなどのメリットをもたらしている。

想定された省エネ効果だけではなく、排水温を下げるといった副次効果も

被膜設備の洗浄槽熱回収リモート盤。中央部の操作パネル SmartScreenで、熱回収にかかわる機器の運転状況などを監視・記録している。上部のデジタル指示調節計 形R35ではドレン水のpH濃度を計測している。

被膜設備の洗浄槽熱回収リモート盤。中央部の操作パネル SmartScreenで、熱回収にかかわる機器の運転状況などを監視・記録している。上部のデジタル指示調節計 形R35ではドレン水のpH濃度を計測している。

こうした取組みの成果は着々と上がっています。コンプレッサの高効率化による電力使用量の削減に加え、蒸気や温水の回収による熱の再利用でボイラのガス使用量が大幅に抑制できており、同社では、原油換算で年間100キロリットル、省エネ率にして5.7%のエネルギー削減を見込んでいます。

「廃熱を有効利用することで排水温も下がり、下水道法で定められた排水温度の基準値を超える心配もなくなるといった副次的な効果も得られています」(高橋氏)

「今回の仕組みを追加したことによるオペレーションの変更もほとんどなく、スムーズに運用を開始することができました」(森本氏)

今後、松菱金属工業では、これらの仕組みを活用して、さらなる省エネルギーに向けた改善を図っていきたいと考えています。

「今後は、SmartScreenによって詳細に把握できるようになった機器ごとの稼働状況のデータ分析が重要な決め手になるはずです。アズビルには、そうしたデータ活用の支援も含め、持ち前のノウハウと技術力に基づく、広範な視点に立った省エネ提案を大いに期待しています」(高橋氏)

用語解説

※1 磨棒鋼

ステンレスのように光った精度の高い丸棒や平鋼・角鋼などの鋼材のことで、主に車や機械の部品の切削母材として使われる。圧延されたままの鋼材は、表面の酸化被膜や目に見えない傷などがありそのまま使えないため、加工を施して磨棒鋼を作る。

※2 冷間圧造用鋼線

金属は適切な荷重を加えると破壊することなく変形する性質を利用し、穴の開いたダイスから素材を引き抜いて加工するなどして仕上げられた鋼線。熱を加えず常温で加工される。

※3 ISO14001

国際標準化機構(ISO)が定める環境マネジメントシステムに関する国際規格の総称。組織の活動・製品およびサービスによって生じる環境への影響を持続的に改善するためのシステムの構築、継続的改善というPDCAサイクルの実践を要求している。

※4 エネルギー使用合理化事業者支援事業

環境共創イニシアチブ(SII)が、事業者の計画した省エネルギーへの取組みに関し「技術の先端性」「省エネルギー効果」「費用対効果」を踏まえて政策的意義が高いと認めた設備導入についての支援を目的とした補助制度。

お客さま紹介

松菱金属工業株式会社 品質・技術部 設備管理グループ 兼 CO2削減推進班 グループリーダー 森本 智志 氏
松菱金属工業株式会社
品質・技術部
設備管理グループ 兼 CO2削減推進班
グループリーダー
森本 智志 氏
松菱金属工業株式会社 品質・技術部 設備管理グループ 兼 ISO・TS事務局 兼 CO2削減推進班 マネジャー 高橋 航介 氏
松菱金属工業株式会社
品質・技術部
設備管理グループ 兼 ISO・TS事務局 兼 CO2削減推進班
マネジャー
高橋 航介 氏

松菱金属工業株式会社

松菱金属工業株式会社

  • 所在地/東京都羽村市神明台2-5-1
  • 設立/1947年8月5日
  • 事業内容/磨棒鋼、冷間圧造用鋼線および素形製品の製造・販売

この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2014 Vol.3(2014年06月発行)に掲載されたものです。

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