HOME > 納入事例 > 株式会社MTI(日本郵船グループ)

株式会社MTI(日本郵船グループ)

燃料消費動向の"見える化"で船舶の運航にかかわる省エネルギーを推進

国際海運にかかわる環境技術の開発に取り組むMTIでは、航行中の船上で乗組員がリアルタイムに燃料消費の動向をモニタリングし、状況に応じて適切な省エネ運航を行うシステムの構築に着手。長期航海を続ける船上においても、常に安定稼働する高信頼の自動計測システムを実現しました。さらにこのシステムは、陸上の運航管理システムとも統合され、船舶の省エネ推進の重要な役割を担っています。

日本郵船グループ 株式会社MTI

日本郵船グループ 株式会社MTI

工場・プラント分野 船舶 省エネルギー

導入製品・サービス

FUELNAVI(燃費計)

燃料消費動向の可視化により乗組員の省エネ意識を醸成

国際海運を中心とする「海・陸・空にまたがる総合物流企業グループ」として、グローバルに事業を展開する日本郵船(NYK)グループ。同グループの「モノはこび」にかかわる技術の研究・開発を担っているのが株式会社MTIです。NYKグループでは、特に環境・省エネ分野について2008年4月以来、環境特命プロジェクト「NYK Cool Earth Project」を推進しており、国際海運の環境技術において世界最先端を目指すことを表明しています。その活動の中核的存在として、MTIには大きな期待が寄せられています。

同社では、航行時に波の抵抗だけではなく風圧抵抗をも考慮した船舶の形状デザインの研究や、「MT-FAST」※1と呼ばれる船舶用省エネ装置の開発を行うなど、安全運航に加え、より少ない燃料消費量での運航を実現するための技術開発に取り組んできました。

「ハード面だけではなく、船舶の乗組員が明確な省エネ意識を持ちながら燃費を考慮した航行を行うことも不可欠です。それを支援するための仕組みづくりも当社にとって重要なテーマとなっていました」(安藤氏)

通常、船舶の燃費については、日々、燃料の積算カウンタに基づいて機関士が1日1回程度算出します。これに対しMTIが目指そうとしたのは、運航中の船上でリアルタイムに燃料消費動向が把握できるような仕組みでした。

広範な産業分野で培われた高度な計測ノウハウに期待

船内に設置された燃費計

船内に設置された燃費計

燃費計に接続したモニタ。
燃費計が収集したあらゆるデータを基に、燃料1トン当たりの航行マイル数や、1マイル当たりのCO2量がリアルタイムで表示される。

MTIではまず、リアルタイムに燃費を把握できる独自のシステム構築に挑戦しました。ところが、連続稼働するシステムが不安定で、長い航海の途中でシステムが止まってしまうなどの課題を抱えていました。そうした経緯から、同社では船上でも24時間365日安定的な稼働が可能な、高信頼の自動計測システムの必要性を痛感していたといいます。

「そのような折、日本郵船の子会社で船舶向けに山武のシステム、計装機器も販売している郵船商事株式会社の計らいで、2006年6月にNYKグループと山武との間で省エネルギーをテーマとした技術交流会が催されました。この交流会がきっかけとなり、幅広い産業分野で豊富な実績を持つ山武のノウハウを活用することこそが、我々の課題を解消する最善策であると判断しました」(安藤氏)

2007年4月に立ち上げられたプロジェクトでは、エンジンの回転数や燃料消費量をはじめ、航行スピードや揺れ、風向及び風速、舵角、海水温度などのデータを、GPS、各種センサ、エンジンのデータロガー※2から収集し、それらの解析により現在の燃費をリアルタイムでモニタ上に可視化する「燃費計FUELNAVI」と呼ばれるシステムがMTIと郵船商事、山武の技術協力により開発されました。早速、MTIでは日本郵船株式会社に呼びかけてコンテナ船、タンカー、自動車運搬船、鉄鉱石運搬船など5隻にシステムを搭載して試用を開始しました。

その成果は極めて良好でした。その一例としては、ある船がいつもと同様のエンジン回転数で航行しているにもかかわらず、1日当たりの燃料消費量が時間を追って増えてくるという状況に遭遇しました。その間、海がしけてきており、同じ回転数でもより大きなトルク※3が必要となっていたのです。そうした状況を把握し、船長は機関士長と相談の上、しけの間だけ回転数を落とすという対処を取りました。

「結果、目的地への到着は1時間ほど遅れましたが、半日程度エンジンの回転数を落としたことで、燃料にして約20トン、当時の価格で約80万円の節約ができました。実際のところ、省エネルギーの観点では、荒れた海では回転数を上げないのが常識で、それは船長も十分に承知しているのですが、目の前に情報が"見える化"されることで"気づき"が得られました。このケースは、まさにその好例だと思います」(安藤氏)

"見える化"を実現することで船長や機関士間などのコミュニケーションも活発になったといいます。「燃費計」においては、主要な運航関連データを収集することにより船上での省エネルギーだけではなく、「MT-FAST」など船舶の省エネ装置の性能解析という側面でも貢献しています。

「トライアルは1年間に及ぶものでしたが、その間、常時発生する我々のニーズをつぶさにくみ取り、速やかにシステムに反映してくれた山武の臨機応変な対応が非常に印象的でした」(戸来氏)

※2012年3月以前の情報は、旧名称が使われているケースがあります。ご了承ください。

海と陸で運航状況を見える化 経済性と安全性のさらなる向上を目指す

トライアルでその有用性が立証された「燃費計」は2008年12月には、船上だけではなく船から陸に送信される「アブログ」※4と呼ばれるレポーティング・システムと連携する形で進化を遂げ、運航管理者用のツールSIMS(Ship Information Management System)として大きな威力を発揮しています。現在、日本郵船が所有する各船種の中でも特にインパクトの大きいコンテナ船に搭載された「燃費計」から1時間ごとの運航関連データを陸側のSIMSで受けることで経済性と安全性の確認を行っています。

「これにより、陸上の運航管理者が、これまで1日1回のアブログを通してその概要しか知ることのできなかった船舶の運航状況を、詳細なレベルで把握できるようになりました。例えば、同じ航路を運航している同じような船舶の間に大きな燃料消費の差があった際に、気象や海象の状況なども加味しながら、そうした差がなぜ生じたのかを分析し、燃料節減のための的確なアドバイスを行うことが可能となりました」(角田氏)

「今後、船舶の運航に関する省エネルギーの取組みは、グローバル規模でますます活発化することが予想されます。山武とともに取り組んだ今回のシステムへの期待もますます高まることでしょう。今後もMTIと山武で、さらにコミュニケーションを図り、海の上の省エネルギーに貢献していきたいと思います」(安藤氏)

※2012年3月以前の情報は、旧名称が使われているケースがあります。ご了承ください。

用語解説

※1 MT-FAST

船舶のプロペラ前方に複数の翼を取り付けることで、プロペラの回転から生まれる旋回流を抑えて推進効率を向上させることで燃費削減効果が得られる、MTIの開発した省エネ装置。

※2 データロガー

センサで計測された温度、圧力、流量などのデータを保存する電子計測器。

※3 トルク

ねじを回す力。ねじりモーメントともいう。棒をよじる場合や、モーターなどの原動機の回転軸における駆動力を示す。

※4 アブログ(Abstract log)

航行距離や燃料消費量、入出港の地名や時間、積載貨物名や数量など、船舶の運航上発生した重要な情報を記録する日誌。

お客さま紹介

日本郵船グループ株式会社MTI 技術戦略グループプロジェクト マネージャー 安藤 英幸氏
日本郵船グループ株式会社MTI
技術戦略グループ
プロジェクト
マネージャー
安藤 英幸氏
日本郵船グループ株式会社MTI 技術戦略グループ 研究員 角田 領氏
日本郵船グループ株式会社MTI
技術戦略グループ
研究員
角田 領氏
日本郵船グループ株式会社MTI 技術戦略グループ 研究員 戸来 直樹氏
日本郵船グループ株式会社MTI
技術戦略グループ
研究員
戸来 直樹氏

株式会社MTI(日本郵船グループ)

日本郵船グループ 株式会社MTI

日本郵船グループ 株式会社MTI

  • 所在地/東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビル5F
  • 設立/2004年4月1日
  • 事業内容/船舶の安全運航及び運航に関する環境・省エネ技術の研究・開発

この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2010年04月号に掲載されたものです。

工場・プラント分野の納入事例

省エネルギーの納入事例