アサヒビール株式会社 吹田工場
流量計の設置による計測ポイントの増強で
エネルギー消費の“見える化”を実現
アサヒビールでは、アサヒビールを中心とするグループ酒類部門会社全体で2010年までにCO2排出量を1990年比で15%削減することを目指しています。その達成のために今後重要になってくるのは小さな改善の積み重ね。エネルギー消費の実績を正確に把握するために生産プロセスの各所に水や炭酸ガス、蒸気などの流量計を設置し、新たなアクションにつなげています。

ビールの発酵を行うタンク。
構内に約170本のタンクが立ち並ぶ
工場・プラント分野 食品 省エネルギー 流量計
導入製品・サービス
「スーパードライ」のアサヒビールは環境対策でも先進的な企業
アサヒビール株式会社は、今年創業120周年を迎えました。1987年に発売された「アサヒスーパードライ」は、20年連続で年間の販売数量が1億箱を超え、ビールというカテゴリーで大きなシェアを占めるブランドとなっています。
一方でアサヒビールは、環境を重視する代表的な企業としても知られています。
「2002年には、すべての工場でゼロエミッション※1を達成したほか、アサヒビールを中心とするグループ酒類部門会社全体では、2010年までにCO2排出量を1990年比15%削減することを目標に掲げています。それを受けて各製造工場でも、エネルギーの使用量の削減に取り組んでいます」(辺見氏) ビールの製造工程では、燃料や電力などのエネルギーを使用しており、それらを削減するため、各工場でコージェネレーションシステム※2などの省エネルギー設備を導入し、省エネルギーを推進してきました。
「1990年当時と比較して生産量が約5割増加しているなかで、2008年の段階では全社で約10%、吹田工場では14~15%のCO2排出量削減を達成しています。大型の省エネルギー施策がひと通り終了した今後は、工場内の各部署で小さな改善を積み重ねていく取組みが重要になるはずです」(辺見氏)
蒸気やCO2の流量を把握する最適なソリューションを提案

炭酸ガスの流量を計測する大流量マスフローメータ CML
基幹工場のひとつである吹田工場は、他工場に比べ生産する製品種類が多く、多品種小ロットの生産プロセスが特徴です。
「さらなる省エネルギー対策のための課題として指摘されたのが、工場内の各製造プロセスが実際にどれだけのエネルギーを消費しているのかを明確にすることです。ビール工場では、水や炭酸ガス、蒸気など、さまざまな流体を使用していますが、それらの流量を正確に測定して把握し、他工場の同じプロセスと比較することで、改善のターゲットを明確にしたいと考えました」(長谷川氏)
アサヒビールでは2004年から3年間をかけて、西宮工場に流量計が導入され、液体や気体などの流量を細かいポイントで計測できるようになりました。その実績を通して高い評価を得たのが、山武の大流量マスフローメータCML※3です。CMLは微少な流量まで高精度に測定できる広いレンジアビリティによって、恒久的な“漏れ”の管理や、製造ラインにおける改造前後の流量変化の把握などを行うことができます。これらの特長が、原単位での管理を正確に行いたいというニーズに合致し、高い評価を得ました。
「吹田工場に対してもベンチマークの徹底や配線コスト削減などの最適なソリューションを提案してくれたことが、山武の流量計を採用するポイントになりました」(長谷川氏)
吹田工場には現在までに、CMLのほか、分離形の蒸気流量計STEAMcube™※4(スチームキューブ)やスマート電磁流量計MagneW™3000 FLEX+(マグニュー3000フレックスプラス) など、山武の流量計が約200台導入されています。特に同社では、食品の安全・安心の観点から圧力補正のためにSTEAMcube内に含まれている封入液を、従来のシリコンオイルから安全性の高い食品添加物に変更した特殊仕様のものを採用しています。また、流量計は高所に取り付けられることも多いためRS-485通信※5を利用し、マルチチャンネルプログラマブル表示器EST※6と流量計を接続することで、積算値と瞬時値を手元にあるESTで表示できるようになり利便性が向上しました。

蒸気流量を計測する分離形のSTEAMcube

複数の流量計の計測値を一元監視することができるEST
エネルギー消費の“見える化”の次のアクションでも協力体制を

アサヒビール主力商品群
「現在は1年分のデータを分析し、次の施策のプランを練っているところです。流量計を増強して“見える化”したデータを、新たな省エネルギーに結び付けていくことが大切ですね」(長谷川氏)
またアサヒビールでは、2009年からエネルギー消費の“見える化”の水平展開を博多、四国、名古屋、福島、北海道の5工場を対象に計画しており、さらなる省エネルギーの徹底によるCO2排出量削減の取組みをスタートさせる予定です。山武の流量計は、既に博多工場での全面的な採用が決まっているほか、確かな実績をもとに多くの工場で利用されることが期待されています。
「今後のアクションでも、山武とはWin×Winの関係で協力していきたい」と長谷川氏が語るように、両社の協力関係が、より高い生産性の実現、そして省エネルギーに貢献していくはずです。
※2012年3月以前の情報は、旧名称が使われているケースがあります。ご了承ください。
用語解説
※1 ゼロエミッション
国連大学が提唱しているコンセプトで、産業から排出されるすべての廃棄物や副産物が、他の産業の資源として活用され、全体としていかなる形の廃棄物を生み出さない統合化された生産を目指す考え方。
※2 コージェネレーションシステム
燃料を用いて発電するとともに、その際に発生する排熱を冷暖房や給湯・蒸気などの用途に有効利用する省エネルギーシステム。空調負荷・給湯負荷などの熱需要の多い施設やエネルギー需要量の大きい工場などに導入されている。
※3 大流量マスフローメータ CML
大流量の気体流量計測を実現した高性能質量流量計。高精度かつ1/1280まで表示可能なハイレンジアビリティにより、低流量域の測定を実現。工場エアーの省エネルギーやエネルギー管理に効果を発揮する。
※4 蒸気流量計 STEAMcube
飽和蒸気測定のために開発された蒸気専用流量計。保温工程などの、これまで測定の出来なかった低流量からの測定が可能。必要上流直管長が極めて短いため、配管レイアウトの自由度が高いことも特長。
※5 RS-485通信
米国電子工業会(EIA)によって標準化されたシリアル通信の規格。RS-485は業務用コンピュータに多く用いられている規格で、最大で32台までの複数対複数接続に対応している。
※6 マルチチャンネルプログラマブル表示器 EST
マルチチャンネル通信、マルチウィンドウ表示、充実したパッケージソフトなど多彩な機能をもつプログラマブル表示器。装置の小型化、設置の効率化、データ処理の高度化といった生産現場のニーズに応え、操作/モニタ/データ管理の中核として高いパフォーマンスを発揮する。
お客さま紹介

吹田工場
エンジニアリング部
部長
辺見 裕氏

吹田工場
エンジニアリング部
プロデューサー
長谷川 豪氏
アサヒビール株式会社 吹田工場

アサヒビール株式会社 吹田工場
アサヒビール株式会社 吹田工場
- 所在地/大阪府吹田市西の庄町1-45
- 設立/1891年
- 主な事業内容/国内酒類事業、飲料・食品・薬品などのグループ事業、国際事業など
この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2009年04月号に掲載されたものです。