ニッポン高度紙工業株式会社
“気づきを高める仕組み”を追求したオペレーション環境を設計・構築
電解コンデンサ用セパレータの分野で圧倒的なグローバルシェアを誇るニッポン高度紙工業。同社では、BCP対策を念頭に鳥取県米子市に新たな工場を設置しました。新工場では生産現場の監視・制御作業の効率化を目指し、それに向けた中央操作室の設計・構築を実施。“気づきを高める仕組みづくり”をテーマに実施された様々な施策が大きな効果を上げています。

ニッポン高度紙工業株式会社
工場・プラント分野 紙パルプ 安定稼働 稼働改善 運転監視・制御システム&ソフトウェア
導入製品・サービス

中央操作室の空間と情報のデザインから効率化を目指す
自動車やコンピュータ、家電といったエレクトロニクス製品に不可欠な電子部品の一つ、電解コンデンサ用セパレータ(絶縁紙)※1を製造するニッポン高度紙工業株式会社。この分野における同社のシェアは、グローバル市場で70%、国内では95%を占め、世界トップメーカーとしての確固たる地位を獲得しています。最近では、ハイブリッドカーや風力発電、太陽光発電といった領域を中心に、急速に需要が高まるリチウムイオン電池用のセパレータの生産にも注力。活躍の場は、環境・エネルギー分野にも大きく広がってきています。
同社では、南海地震での被害が想定される高知県にすべての工場が立地していることから、鳥取県米子市に工場を新設することを決定しました。震災によって、万一、製品供給が滞ってしまうと、世界中の市場に及ぼす影響は計り知れません。そこで、高知との交通の便にも恵まれ、南海地震の影響を回避できる地域として、日本海側の米子が選定されたのです。
「BCP(事業継続計画)の観点から、米子工場を新たに設置することになったわけですが、その建設を契機に、これまで既存工場で進めていた生産革新の取組みをさらに前進させることにしました。まずは生産現場の監視・制御を行う中央操作室自体のデザインを見直し、徹底的な効率化を図っていくことが不可欠だと考えました」(山村氏)
その場で働く人の目線に立ち、気づきを高める空間をCGで表現
このニーズを満たしたのがアズビル株式会社でした。具体的には、アズビルの計器室デザインにかかわるコンサルティングサービスを採用し、そこで提案されている“気づきを高める仕組みづくり”に取り組んでいくことにしました。
「アズビルに対しては、高知の工場において長きにわたる実績があり、当社の生産現場に精通しているという大きな安心感がありました。我々にとって最適なオペレーション環境をデザインしてくれるものと期待したのです」(小嶋氏)
2011年春ごろから、中央操作室の設計がスタート。このとき、アズビルは、単に平面的な設計図面や鳥瞰(ちょうかん)図による提案だけではなく、その場で働く人の目線で何がどのように見えるか、何に気づくことができるかなどをコンセプトシートとともにCG(コンピュータグラフィックス)で表現、新しい中央操作室の空間提案をしました。働きやすい動線と無理なく全体を掌握でき、気づくことができる情報配置、そこから引き出される迅速な意思決定と作業空間、さらには常に改善意欲を持って積極的に働く空間づくりを目的にニッポン高度紙工業とアズビル、両社の担当者が緊密なすり合わせを重ねる形で作業が進められました。
「具体的なイメージが非常につかみやすく、計器室設計における改善要求などのやりとりもスムーズに行うことができました。また、経営サイドの承認を得る際にも大いに役立ちました」(小田桐氏)

DCSで制御工程を確認しながら、工場内の様子も確認することができる中央操作室。人間の特性と操作性を考えた情報配置を基にデスクの形状が設計されている。

中央操作室のデザインを決めていく打ち合わせの中で使用されたCGのイメージ画像。平面的な図面で見るよりも、より現実に近い計器室が想像できる。
確実に情報を得られる中央操作室が生産現場との一体感を演出
その後、確定した設計内容に沿って工事を実施。2012年6月から仮運転を開始し、同年10月末には米子工場の製造設備および中央操作室が本格稼働となりました。稼働後は、“気づきを高める仕組みづくり”をテーマに施された様々な設計上の施策が、オペレーション効率化の上で大きな効果を上げ始めています。
中央操作室から工場を見渡す大きな一面ガラスの前には、そこからの視界(情報)を遮ることなく、複数の監視・制御用のモニタを二段重ねに設置。生産現場の様子を確認しながらDCS※2の操作を行うことができます。併せて、モニタの角度やデスク、椅子をはじめとする什器の高さ、大きさなど細かな調整を施すことで運用・操作性も向上し、生産現場の状態、DCSからの情報、そして中央操作室内での担当者同士のコミュニケーションが一体となり、的確な判断、最適な行動を起こせる環境を実現しました。
「画面構成について、既設工場では複数のモニタを横に並べて運転用グラフィックやトレンドグラフをそれぞれオペレータが一画面ずつ呼び出していました。新工場では、各運転状況に合わせた監視目線を標準化、一台のワイドモニタ内にその状況に応じた運転用グラフィックとトレンド画面などをセットで表示できるウインドウセット機能を採用することで、オペレータ経験年数や力量差から生まれる監視、操作のバラツキをなくすように工夫をしています。またウインドウセットとして呼び出すことで従来に比べて画面呼出しに要するストロークの軽減を図り、知りたい情報にたどり着く時間を短縮、意思決定スピードを向上しました。さらに、各画面の配色や計測値の表現方法にも工夫を凝らし、管理値の逸脱がすぐに分かるようにしています。これらにより、オペレータがより多くの正確な情報に基づいて的確な判断を下していけるような環境が整いました」(小松氏)
「中央操作室内も実際の作業や移動を考えてデザインされているので、全くストレスを感じることなく動けるようになりました。また、今回導入したDCS操作用デスクは足元に支柱がないため、横移動が可能になり広域監視がスムーズになりました」(仲田氏)
ニッポン高度紙工業では、今後、米子工場における生産が拡大していく中で、こうした監視・制御の効率化のメリットがオペレータの作業負荷軽減に貢献し、ひいては同工場の生産効率や品質の向上、また将来に向けて新たな発想を生む“革新的に行動できる現場”の構築にも大きく貢献していくものと期待しています。
「将来的には、オペレータが今現在、生産現場で起こっている状況に速やかに対応していくというだけではなく、問題が発生しそうな予兆に対しても、早期に気づけるようなオペレーション環境を実現していければと考えています」(小嶋氏)
「アズビルには、現場機器やシステムのメンテナンスから、将来的なビジョンに対する提案まで、当社の生産現場の効率性向上を強力に支援していってくれることを大いに期待しています」(山村氏)
用語解説
※1 セパレータ(絶縁紙)
コンデンサ、電池内の陽極(プラス極)と陰極(マイナス極)を仕切って、電流を適正に制御するために用いられる極小、極薄の紙製の部材。
※2 DCS(Distributed Control System)
分散制御システム。プラント・工場の製造プロセスや生産設備などを監視・制御するための専用システム。構成する各機器がネットワーク上で機能を分散して持つことで、負荷の分散化が図れ、安全でメンテナンス性に優れている。
お客さま紹介

製造本部長 兼 米子工場長
山村 泰雄氏

製造部
部長
小嶋 均氏

製造部
生産技術課
課長
小田桐 正季氏

製造部
生産技術課
主任
小松 潤氏

製造部
生産技術課
仲田 幸晴氏
ニッポン高度紙工業株式会社

ニッポン高度紙工業株式会社
ニッポン高度紙工業株式会社 米子工場
- 所在地/鳥取県米子市二本木220-1
- 事業内容/アルミ電解コンデンサ、導電性高分子固体コンデンサなどコンデンサ用セパレータ、アルカリ乾電池、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池など電池用セパレータの製造・販売
この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2013 Vol.1(2013年02月発行)に掲載されたものです。