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株式会社カネカ 高砂工業所

高度制御の再構築により省エネ施策で新たな時代に対応

カネカ 高砂工業所では、全社的なコスト削減要求を背景に、電解と塩ビモノマーの生産工程における省エネルギーに着手。かつて品質安定化を主眼において導入した高度制御の適用を、品質安定化に加えて省エネルギーの視点から再構築。取組みの結果、多大なコスト削減効果が得られました。

株式会社カネカ 高砂工業所

株式会社カネカ 高砂工業所

工場・プラント分野 化学 省エネルギー 運転監視・制御システム&ソフトウェア 圧力計(圧力センサ)/差圧計(差圧センサ)

製品の品質安定化に加え省エネ推進が課題に

多変数モデル予測制御で予測した結果を新世代プラント・オートメーション・システム Advanced-PS™APS5000の運転に反映して最適運用を実施する。

多変数モデル予測制御で予測した結果を高度情報統合生産システム Advanced-PSの運転に反映して最適運用を実施する。

素材メーカーとして、化成品や機能性樹脂、発泡樹脂製品、食品、ライフサイエンス、エレクトロニクス、合成繊維など幅広い分野の製品を提供する株式会社カネカ。最近では、機能性食品素材「還元型コエンザイムQ10」や、住宅市場向け薄膜系ハイブリッド太陽電池」など、最新のニーズに応える先進的な製品群を次々に市場に送り出しています。

高砂工業所は、約128万平方メートルの広大な敷地に、国内有数の塩ビモノマープラントをはじめとする大規模プラント群を擁する主力生産拠点です。先進性に富んだ製品を日々生み出すこの工業所は、その製造を支える生産技術の面でも、常にチャレンジ精神あふれる先進的な取組みを行っています。例えば、1995年には製品の品質安定化や運転の自動化を目的に多変数モデル予測制御※1による高度制御を塩ビモノマー(VCM)の生産プラントと電解プラントに導入しました。

「両プラントでは、多くの電気や熱が使われています。そこで今回は、省エネルギーを大きく前進させるために、この高度制御を両プラントの広範なプロセスに適用することにしました」(林氏)

その背景として、2008年秋のリーマンショック以降続く不況の中で、さらに徹底したコスト削減が全社的な至上命題となっていたことが挙げられます。加えて、CO2排出削減に向けた要求も年々高まっており、そうした社会的要請からも省エネルギーのさらなる推進が不可欠でした。

「VCMプラントや電解プラントは、取扱量が多いため原単位の改善が大きなコスト削減につながります。生産工程における省エネルギーについては、様々な取組みを何十年にもわたって進めてきており、製造部門では、さらなる省エネルギーに向けてのいくつものアイデアを温めていました」(林氏)

「現場のアイデアの効果を予測し、適切な投資対効果を得るような提案にまとめる必要がありました。そこで、品質安定化などにおいて一定の成果を挙げていた高度制御の適用拡大によって、新たな可能性を見いだそうと考えたのです」(木村氏)

制御からフィールド機器まで幅広いノウハウに安心感

早速、高砂工業所では、先年の高度制御の導入において実績があり、適用対象となるプラントや生産工程にも精通している山武に相談を持ちかけました。これに対し山武では、2009年初めにフィージビリティスタディ(FS)を実施。VCM、電解の両プラント全体の動きを綿密に調査して、高度制御による省エネルギーの余地を徹底的に洗い出すとともに、実施すべき制御戦略をまとめ上げ、その投資対効果を算定しました。

「このとき山武には、高度制御とプロセスとのかかわりを含め、その内容を詳細に解説してもらいました。それを受けて、現場の運転員が新たなアイデアを提案し、必要に応じて制御案に盛り込むなど、製造現場と生産技術部門、山武が一体となった相乗効果によって省エネルギーに向けた制御の可能性を隅々まで探っていくことができました」(嶋氏)

また、山武に任せきりにするのではなく、報告書の制御内容について自社プラントを使って検証実験を行い、その実現性や精度の確認を行いました。

「これまで現場では認識されていなかったプロセス間の因果関係などが明らかになりました。また、自分たちでは確実に制御ができていると思っていたところに改善の余地があることが発見でき、オペレータの意識とやりがいも向上しました」(浅井氏)

一方、高度制御を実際の現場で最適に機能させるには、その下にあって手足となるDCS※2内のPID※3制御ループ、そしてそのループを構成する発信器や調節弁などのフィールド機器を含む現場側を適切に動作させることが必要です。

「山武はそういった作業を確実に実施してくれました。PIDチューニングを実施し、それを通して我々が普段気づかなかった機器の不調の発見など、高度制御稼働前にも既に大きな成果が得られました。まさに、フィールド機器から高度制御に至るまで全体をサポートできる山武の強みを改めて実感しました」(坂東氏)

多変数モデル予測制御を実際に行っている実機。この演算結果をDCSの運用で利用する。

多変数モデル予測制御を実際に行っている実機。この演算結果をDCSの運用で利用する。

塩素ガスの圧力を計測する差圧/圧力発信器DSTJ™3000。

塩素ガスの圧力を計測する差圧/圧力発信器DSTJ™3000。

約1年間のプラント稼働で投資の回収が可能に

このような経過を経て、品質安定化に加えて省エネルギーを実現する高度制御を適用したVCM、電解の両プラントは、2009年末~2010年春に順次稼働を開始しています。

「稼働の結果、当初、FSを通して期待されたとおりのエネルギー削減効果が得られています。その成果は、約1年間の稼働で今回のプロジェクトに要した投資を回収できるという非常に満足のいくものです」(倉本氏)

「今回の再構築によりソフトセンサー※4など新しい技術を導入しました。その効果は、制御性能の大きな改善となって表れました」(嶋氏)

「より最適な制御が実現されたことで、ある工程では稼働中に発生するアラームも、それまで1日70~80回程度発生していたものが、数回程度と激減しました。その結果、オペレータの介在が少なくなり、作業負荷は大幅に軽減されています」(門永氏)

「省エネルギーや品質安定化以外にも、アイデアさえあれば、生産工程における様々な領域において大きな改善が図れる可能性を感じています。ぜひ、今後もそうした可能性を追求していきたいと考えています。もちろんそれには、フィールド機器や制御にとどまらずプラント全体の最適化に及ぶ高度なノウハウが必要です。これらのノウハウを持つ山武のサポートが我々には不可欠です」(林氏)

※2012年3月以前の情報は、旧名称が使われているケースがあります。ご了承ください。

用語解説

※1 多変数モデル予測制御

制御変数や操作変数などの多変数間の関係をモデル化して、拘束条件や経済効率などの相互関係を与えることで最適運転、経済運転を行うための制御。

※2 DCS(Distributed Control System)

分散制御システム。プラント・工場の製造プロセスや生産設備などを監視制御するための専用システム。構成する各機器がネットワーク上で機能を分散して持つことで、負荷の分散化が図れ、安全でメンテナンス性に優れている。

※3 PID制御

フィードバック制御の基礎的な手法であり、入力値の制御を出力値と目標値との偏差、その積分、及び微分の3つの要素によって行う方法。

※4 ソフトセンサー技術

温度、流量、圧力などのプロセス計測値を利用して製品の品質を推算する技術。通常のハードウエア分析計に比べてリアルタイムでの品質値が得られるため、品質制御にありがちな「遅れ」を取り除き、制御性能向上に貢献する。

お客さま紹介

株式会社カネカ 高砂工業所 化成製造部長 林 靖二氏
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高砂工業所
化成製造部長
林 靖二氏
株式会社カネカ 高砂工業所 化成製造部 化成品課長 坂東 敏男氏
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化成製造部
化成品課長
坂東 敏男氏
株式会社カネカ 高砂工業所 化成製造部 技術担当(幹部職) 浅井 洋介氏
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化成製造部
技術担当(幹部職)
浅井 洋介氏
株式会社カネカ 高砂工業所 化成製造部(技術) 門永 勇紀氏
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化成製造部(技術)
門永 勇紀氏
株式会社カネカ 高砂工業所 生産技術本部技術部 生産技術グループ 幹部職 木村 大作氏
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生産技術本部技術部
生産技術グループ
幹部職
木村 大作氏
株式会社カネカ 高砂工業所 生産技術グループ エンジニアリングチーム 計装システム担当 幹部職 倉本 孝政氏
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高砂工業所
生産技術グループ
エンジニアリングチーム
計装システム担当
幹部職
倉本 孝政氏
株式会社カネカ 高砂工業所 生産技術グループ エンジニアリングチーム 計装システム担当 主任 嶋 賢一氏
株式会社カネカ
高砂工業所
生産技術グループ
エンジニアリングチーム
計装システム担当
主任
嶋 賢一氏

株式会社カネカ 高砂工業所

株式会社カネカ 高砂工業所

株式会社カネカ 高砂工業所

  • 所在地/兵庫県高砂市高砂町宮前町1-8
  • 設立/1949年9月1日
  • 事業内容/化成品、機能性樹脂、発泡樹脂製品、食品、医薬品、医療機器、電子材料、合成繊維などの製造及び販売

この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2010年11月号に掲載されたものです。

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