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水島ガス株式会社

制御システムの更新で作業効率の向上と燃料費の大幅削減を実現、地域の安定したガス供給を支える

岡山県倉敷市の南西部で、水島コンビナートをはじめとする多くの事業者に天然ガスを供給する水島ガス。ガス製造設備の制御システムの保守契約満了を契機にシステムを更新すると同時に、制御ロジックを見直し、効率的に制御することで燃料コストを大幅に削減することに成功しました。万一の障害に備えたシステムの保守体制も整備し、24時間・365日、途切れることなくガスを安定供給することによって日本屈指の工業地帯を支えています。

工場・プラント分野 電力・ガス 安定稼働 稼働改善 メンテナンスサポート 運転監視・制御システム&ソフトウェア スイッチ/センサ ライフサイクルサポート

DCS保守契約満了を契機に制御にかかわる課題を見直し

産業用・家庭用ガスを岡山県倉敷市南西部地域のユーザーへ供給する水島ガス株式会社。同地域には、石油化学コンビナート、鉄鋼、自動車分野などの水島臨海工業地帯があり、同社のガス販売量の80%は工業用途で占められています。

水島ガスは、水島LNG※1基地からパイプラインを通じて送られてくる天然ガスを、同社のガス製造所で基準の熱量に調整して顧客に供給しています。これまで稼働していたDCS※2の保守契約が2013年5月に切れることから、2011年後半からシステム更新を検討していました。

「単純にシステムを入れ替えるだけではなく、課題や問題点をすべて洗い出し、その解決策を探るため、更新に当たり複数のベンダーから提案を受けることにしました」(合木氏)

例えば、課題の一つに温水ボイラの制御がありました。同社のガス製造工程では、ガスの温度が0℃を下回らないよう維持するという制御上のルールが定められており、そのために温水ボイラを常時稼働させて温度を維持していました。

「実は、ガスの温度が0℃を下回る可能性があるのは冬のごく限られた期間にすぎません。それにもかかわらず常に温水ボイラを稼働させて備えるのは、燃料コスト面で非常にムダが多い状況と言わざるを得ませんでした。そこで、温水ボイラの稼働を適切に制御し、燃料コストの最適化を図る提案を要件の一つに加えました」(藤岡氏)

また、システムを更新しても、既存のシステムでの運転に慣れたオペレータが操作しやすいように操作性を踏襲することも不可欠な提案要件として加えられました。

周到な準備作業の積重ねが、短時間での切替えを可能にした

DCS更新に合わせて、ガス製造システム、遠隔監視システム、ガス圧力制御システムを1カ所で統合的に監視できる環境を整備するとともに、52型の大型モニタを導入することで画面の前にいなくても運転状況を確認することができるようになった。

DCS更新に合わせて、ガス製造システム、遠隔監視システム、ガス圧力制御システムを1カ所で統合的に監視できる環境を整備するとともに、52型の大型モニタを導入することで画面の前にいなくても運転状況を確認することができるようになった。

各ベンダーの提案内容を検討した結果、水島ガスはアズビル株式会社の採用を決定しました。

「当社の要件に対し、計装から電装、保守サービスに至るトータルな提案で、最も納得できる解決策を提示してくれたのがアズビルでした。これまでもガバナステーション※3の遠隔監視や工場内のガス圧力制御にアズビルのシステムを採用してきた実績があり、安心感もありました」(藤岡氏)

「特にサポート力の高さは、大いに評価していました。以前、落雷で圧力制御システムに不具合が発生した際、休日にもかかわらず、アズビルの担当者はすぐに駆けつけてくれ、即日に復旧できたことがありました」(向井氏)

水島ガスは2013年1月、システム更新をアズビルへ正式発注。まずは、既存システムの改修などで複雑になってしまっていた配線などの現状調査をじっくりと行うことになりました。そして同年5月初旬、工事に着手し、8月に協調オートメーション・システム Harmonas™への切替えが完了しました。

水島ガスは、24時間体制でガスの製造・供給を行っているため、システムの停止は許されません。ただし、同社が保有するガスホルダーには約8時間分のガスを蓄えることができるので、システムの切替えには需要が少ない夏場の深夜を選定。22時にガス製造を停止し、翌日の6時に製造を再開するというスケジュールを組み、その間に切替え作業を行うことにしました。

「失敗の許されない作業でしたが、アズビルが既存システムの配線の調査や新システムについて事前に配線の引回しなどの作業を2カ月ほど前から綿密に実施してくれたおかげで、当日は最短の時間で安全かつスムーズにシステム移行することができました」(藤岡氏)

「我々も把握しきれなくなっていた既存の配線については、安易にいじると供給が止まってしまうというリスクがある中、安全に確実に対応してくれました」(向井氏)

プラント内に分散して設置しているインテリジェント地震センサ SES60(箱内)。3システム設置のため、合計9台のセンサが稼働中。

プラント内に分散して設置しているインテリジェント地震センサ SES60(箱内)。3システム設置のため、合計9台のセンサが稼働中。

顧客側の機器設置例。取引用のパルス発信機能付きメーターの近くに伝送端末を設置。流量の計測を通信機能付きデマンド計が行い、伝送端末機から本社のセンターシステムへデータを送信する。

顧客側の機器設置例。取引用のパルス発信機能付きメーターの近くに伝送端末を設置。流量の計測を通信機能付きデマンド計が行い、伝送端末機から本社のセンターシステムへデータを送信する。

現場に密着した即応体制と一括保守サービスに安心感

ガス製造の運転管理を行っているHarmonas。

ガス製造の運転管理を行っているHarmonas。

移行後のシステムでは、今まで抱えていた課題や問題点を解消することができました。温水ボイラについては、ボイラを起動しないと設備が稼働しない仕組みになっていたところを見直し、原則としてガスの温度が5℃以下になった場合にのみボイラを稼働させる制御を実装しました。これによりムダな燃料費がなくなり、年間で約200万円のコストダウンが見込まれています。

またDCSの監視画面の操作性についても、従来のシステムを踏襲してオペレータがスムーズに操作できる環境を維持しました。さらに、ガバナ制御や圧力制御のシステムが同じ監視室の中でバラバラに設置されていましたが、DCSを更新する際にすべて集中監視できる環境にし、より効率的なオペレーションが可能となりました。

「サポート面についても、アズビルは他社製のバルブなどを含めた一括保守サービスを提供しており、窓口を一本化することが可能です。各メーカーへの連絡やスケジュール確認という手間が省けますし、何よりシステムからバルブまで全体を理解した担当者が素早く対応してくれますので大きな安心感があります。今後は、故障の兆候を未然に察知できるような点検や検査を実施し、予防保全の強化も図っていきたいと考えています」(向井氏)

「今後は若い世代、次の時代を担う人材を育てていかなくてはなりません。これについてもアズビルと協働で教育用のシミュレータを導入するべく既に仕様の検討を進めています。24時間・365日、滞ることなくガスを供給し続けることが当社の最大の使命です。今後もアズビルにはパートナーとして、ガスという重要なライフラインのインフラを共に支えてくれることを期待しています」(合木氏)

用語解説

※1 LNG(Liquefied Natural Gas)

液化天然ガス。天然ガスを冷却して液化したもの。

※2 DCS(Distributed Control System)

分散制御システム。プラント・工場の製造プロセスや生産設備などを監視・制御するための専用システム。構成する各機器がネットワーク上で機能を分散して持つことで、負荷の分散化が図れ、安全でメンテナンス性に優れている。

※3 ガバナステーション

ガス工場から幹線パイプラインを通じて高圧で送られてくるガスを、中圧に減圧して地域に供給する施設。

 

お客さま紹介

水島ガス株式会社 供給部長 合木(ごうき) 賢治氏
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供給部長
合木(ごうき) 賢治氏
水島ガス株式会社 供給部 供給グループマネジャー 向井 源語 氏
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供給部
供給グループマネジャー
向井 源語 氏
水島ガス株式会社 供給部 供給グループ 保全・生産チーム チーフ 係長 藤岡 芳人 氏
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供給部
供給グループ
保全・生産チーム
チーフ
係長
藤岡 芳人 氏

水島ガス株式会社

水島ガス株式会社

  • 所在地/岡山県倉敷市水島福崎町3-30
  • 設立/1942年4月17日
  • 事業内容/ガスの製造、供給・販売、ガス機器の販売

この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2014 Vol.2(2014年04月発行)に掲載されたものです。

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