新さっぽろアークシティ
設備老朽化対策とエネルギーコストの削減を目標に。国内最大級のESCO事業で大幅な省エネルギーを実現
新札幌副都心の中核施設である新さっぽろアークシティでは、ショッピングセンタービルの設備老朽化に伴う一連の設備更新施策をESCO事業として展開。全30項目にも及ぶ大規模な改修工事および運用管理の改善を実施することで、当初予定していたエネルギー削減率11.5%に対して16.2%を達成。国内最大級のESCO事業を通して切実な課題だったエネルギーコストの大幅な削減を実現しました。

建物分野 ホテル ショッピングセンター レジャー施設 省エネルギー エネルギーマネジメント コスト削減 安定稼働 老朽化対策 中央監視システム 建物のエネルギーマネジメント
導入製品・サービス

建物管理システム savic-net FX
開業35年の設備更新を機にESCO事業で省エネ化を目指す
札幌市東部の厚別区に位置し、JR新札幌駅と地下鉄新さっぽろ駅を中心に開発されたのが新札幌副都心です。札幌市では1972年9月に「厚別副都心開発基本計画」を策定し、当時、急速な発展を遂げていた札幌市の都市機能の受け皿として、この地域の新規開発を決定しました。1974年には札幌市が出資する第三セクターとして株式会社 札幌副都心開発公社が設立され、以来、同公社が事業主体となって、この地域の開発および管理・運営を行っています。現在、その中心となっているのが新さっぽろアークシティと呼ばれる複合商業施設です。ショッピングセンターであるサンピアザをはじめ、ホテルを備えた駅ビルのデュオ、水族館、劇場などを擁し、年間来訪者数は1,400万人に上ります。
中でも最大の来館者数を誇るのがサンピアザです。開業は1977年にさかのぼり、既に35年以上を経過した建物設備は、老朽化が目立ち始めていました。そこで札幌副都心開発公社では、2009年夏ごろから設備更新とエネルギー削減について検討を開始しました。
「当時は長引くデフレの影響により収益が思わしくなく、コスト削減が最重要課題でした。そこで、支出の大きな割合を占める水道光熱費に着目し、その大幅な削減を念頭に、サンピアザだけでなく、駅ビルのデュオも含めた大規模かつ抜本的な設備更新を目指すことにしました」(寺嶋氏)
「このとき、設計から設備改修、システム構築、さらには運転管理も含めた一連の施策を、ESCO事業※1で展開することに決めたのです」(篠原氏)
豊富な施策メニューで省エネ効果を追求

井戸水浄化システム。市の水道と同等の水質にして、飲食テナントを含む館内に供給している。水道光熱費の削減に大きく貢献している。
早速、札幌副都心開発公社は、ESCO事業者を公募。応募のあった各グループの提案を精査した結果、採用されたのがアズビル株式会社のグループでした。
「アズビルの提案は施策のメニューが豊富で、あらゆる側面から省エネルギーを追求していました。想定される効果もほかのグループが1桁の削減率に対してアズビルは2桁の削減率を提示し群を抜いていました。さらに、公社としての役割を踏まえ、地域ぐるみで省エネ活動を推進するための産学連携や啓蒙活動にかかわる施策まで盛り込まれていた点も高く評価できました」(寺嶋氏)
この提案の採用を決定した札幌副都心開発公社では、シェアード・セイビングス方式によるESCO事業の契約をアズビルと締結しました。設備更新工事は、2011年10月から2012年3月末にかけてサンピアザ分を、続いて着手したデュオの工事を2013年末に完了。空冷ヒートポンプチラーの導入による熱源システム更新をはじめ、サンピアザの特別高圧受電トランスの更新、井戸水の浄化システム導入、電気監視盤の統合、中央監視装置のBEMS※2化など、全30項目に及ぶ大規模な改修工事が行われました。これに加え、新設備稼働後の運用管理もアズビルが担当しています。また、これらの施策には、アズビルが提案した国土交通省「住宅・建築物省CO2先導事業」の補助制度を活用しています。
「例えば熱源では、電気やガス、地域冷暖房の高温水といった異なる種類のエネルギーを併せて導入し、それらをベストミックスで適宜切り替えられるような制御も実現しています。これによりエネルギーコストの変動や災害リスクなどにも柔軟に対応できるようになりました。単に機器を導入するだけでなく、適正な制御や運用のチューニングにより、効果を最大化していくというアズビルならではの強みが活かされています」(福澤氏)
「BEMSにより、テナントごとのエネルギー使用量を、インターネット経由でテナントにリアルタイムに配信する仕組みもできました。さらに、サンピアザとデュオに設置した60インチのディスプレイ(デジタルサイネージ)でもエネルギー使用量をリアルタイムで表示。来館者にも見てもらえるようにしました」(篠原氏)

サンピアザとデュオで分かれていた受電系統を統合し、更新された特別高圧設備からデュオ側へ送電している。今回の工事で更新した特別高圧受電トランス7,500kVA×2台。

サンピアザの中央監視室に設置されたBEMSであるアズビルの建物管理システム savic-netFX。デュオの中央監視室に置かれたBEMSとの間で相互監視が可能となっている。
ESCO事業の好例として講習会、講演を実施

■ESCO事業の定量的効果
こうした一連の施策により、新さっぽろアークシティは大幅な省エネルギーを実現しました。2012年度は、当初予定していたエネルギー削減率11.5%に対して実績が16.2%、水道光熱費の削減率では12.0%の予定に対して19.3%を達成しています。2013年度上期では、予定されたエネルギー削減率13.2%に対して24.2%、水道光熱費では25.4%に対して36.9%という削減率を実現。いずれも、目標値がもともと高く設定されていたにもかかわらず、それを大幅に上回る削減結果となりました。ここで得られた成果は、共益費の減額という形でテナントにも還元されています。
「明確な目標値に対する実績が見える化されることで、経営者層もエネルギー消費量や水道光熱費を経営指標の一つとして強い関心を寄せるようになりました。同時に、従業員の“省エネマインド”の醸成にもつながっています」(寺嶋氏)
新さっぽろアークシティが実施した省エネ施策は、その対象規模の大きさと実現した効果の大きさにより、各方面から大きな関心が寄せられています。これに対し札幌副都心開発公社では、企業や団体からの依頼で省エネルギーやESCO事業に関する講演なども実施しています。
「当社では、今後もこの副都心の開発を永続的に実施していきます。建物の改修や建替えなども随時発生していくことになりますが、アズビルには引き続き、省エネルギーの観点に立った設備やシステムについてのアドバイスを期待しています」(寺嶋氏)
用語解説
※1 ESCO(Energy Service COmpany)事業
工場やビルの省エネルギーに関する包括的なサービスの提供を通じて、そこで得られる効果をサービス提供者が保証する事業。資金を顧客が負担し、ESCO事業者が省エネ保証を行う「ギャランティード・セイビングス契約」と、ESCO事業者が資金提供を行い、顧客は省エネ効果を含めたサービス料を支払う「シェアード・セイビングス契約」という二つの契約形態がある。
※2 BEMS(Building and Energy Management System)
ビル、工場、地域冷暖房といったエネルギー設備全体の省エネ監視・制御を自動化・見える化し、建物全体のエネルギーを最小化するためのシステム。
お客さま紹介

専務
取締役
寺嶋 俊道氏

施設部
部長
篠原 均氏

施設部
次長
福澤 和文氏
新さっぽろアークシティ

株式会社 札幌副都心開発公社
- 所在地/札幌市厚別区厚別中央2条5-7-2
- 設立/1974年5月1日
- 事業内容/「厚別副都心開発基本計画」に基づく開発事業、商業・業務施設等の建設・運用・管理
この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2014 Vol.1(2014年02月発行)に掲載されたものです。