DIC株式会社 北陸工場
エネルギー消費量の"見える化"で省エネ対策活動が大きく加速
印刷材料、工業材料、電子情報材料などにかかわる広範な事業を展開するDICの中核生産拠点の1つである北陸工場。同工場では、頭打ち状態にあった省エネ活動の抜本的な改革を行うためにエネルギー管理・解析システムを導入。システムによるエネルギー消費量の"見える化"が、社員の省エネルギーに向けたモチベーションを高め、対策活動を大きく加速させました。

DIC株式会社 北陸工場
工場・プラント分野 化学 省エネルギー 運転監視・制御システム&ソフトウェア
導入製品・サービス

省エネ対策の改善に向け 管理を"点から面へ"と転換

DIC北陸工場に設置された「安全の年輪」。DICでは、その年度1年間、無災害(休業災害が発生しない)を継続した工場・研究所に対し「安全の年輪」を1層作成、無災害を継続することで毎年1層ずつ増える。写真のモニュメントは、DIC北陸工場がこの36年間無災害であったことを示している。
印刷材料をはじめ様々な分野で事業を展開するDIC(ディーアイシー)株式会社。同社の北陸工場は、合成樹脂を主要な生産品とし、印刷材料や記憶媒体、IT通信関連、自動車関連といった幅広い分野への素材提供を担っています。
DICグループでは「Color & Comfort by Chemistry―化学で彩りと快適を提案する」という経営ビジョンの下、地域との共存、社会への貢献を図り、ステークホルダーの信頼に応える会社を目指しています。その一環として、省エネ活動を中心とした地球温暖化防止への取組みを推進しています。
「北陸工場でも、日化協※1の自主行動計画目標に沿って、2008~2012年の5年間にエネルギー原単位の平均を1990年度の80%以下とするDICグループのCSR方針に則り、様々な取組みを実施してきましたが、ある段階から成果が"頭打ち"になってしまうという状態が続いていました。何らかの抜本的な対策が必要だったのです」(藤野氏)
同工場では、原動部門で発生させた電力、蒸気、窒素といったエネルギーを製造の各現場に供給しています。これに対して各製造現場では、DCS※2や個々の計測機器などによって独自にエネルギー消費量を計測・管理をしていました。そこで収集されたエネルギーデータは、月単位などのまとまった形で個々の現場ごとに紙ベースで集計され、その結果については現場長などの決まった担当者が参照して、省エネ対策を検討するというスタイルでした。
「こうした方法では、エネルギー消費についての情報が個々の現場の限られた担当者で止まってしまい、全社員に対して省エネルギーについての意識を喚起することが困難です。また月単位の集計では日々の細かな消費動向が見えず、問題の本質を捉えることもできません。そこで、リアルタイムな情報を"見える化"し、それを共有することが不可欠だと考えました。対応のあり方を"点から面へ"と転換することにしたのです」(阿部氏)
リアルタイムな"見える化"で隠れていた問題点を抽出
DIC北陸工場では、そうした見える化を実現するシステムの導入を計画し、数社に提案を依頼。それぞれの提案内容を検討した結果、山武のエネルギー管理・解析システム EneSCOPE™(エネスコープ)の採用が決定しました。
「選定に当たっての最大の要件は、収集したデータをどのような形で見える化し、解析ができるかということ。その点でEneSCOPEは、コストパフォーマンスの高さに加え、汎用品のシーケンサなどとの連携も可能で拡張性にも優れており、秒単位でのデータ収集や長期データ蓄積能力に加え、様々なグラフで比較検討ができることなどを評価し、採用を決定しました」(杉谷氏)
EneSCOPEが導入された2009年6月を境に、DIC北陸工場における省エネ対策活動のあり方が根本的に変わりました。エネルギー発生源である原動部門から各現場に至るエネルギーの消費量やそれぞれの現場での消費状況がEneSCOPEによってリアルタイムに可視化され、そこでのロスやムダを検証することが可能になり大きな省エネ効果を生んでいます。
例えば、事務所、低温倉庫のエアコンがフル稼働する夏場の電力デマンド超過対策として、以前は原動課での電力デマンド計だけによる管理だったものがEneSCOPEの30分単位の日報グラフで各部署ごとの消費電力を工場すべての人に「見える化」することができました。削減効果がリアルタイムで確認できるEneSCOPEだからこそ、スピーディな対応が可能となったわけです。

原動部門のエネルギー監視室に設置されたEneSCOPE。原動部門で発生させた電力、蒸気、窒素といったエネルギーの各製造現場における消費量などがグラフ表示され、過去のデータとの比較も容易に行える。

製造現場屋外に設置された蒸気流量計。EneSCOPE導入前の2008年に、エネルギー使用量の“見える化”に向けたインフラ整備の・環として、それまで流量計が設置されていなかった個所に各種流量計が導入された。
明瞭に示される対策の成果が"省エネマインド"を醸成
「さらに、対策の成果を見える化できることも重要なポイントです。自分たちの講じた対策の結果はEneSCOPE上で明確に示され、しかもそれをイントラネット経由で誰もが参照できます。このことは、各現場の社員一人ひとりの省エネルギーに対するモチベーションを喚起する上で大きな役割を果たしています」(前田氏)
これに関連してDIC北陸工場では、EneSCOPE導入と同時に「省エネ推進委員会」をリニューアルしました。そこでは、製造現場だけでなく事務部門も含めた全部署から選出された委員を中心に省エネ対策にかかわる様々な提案や議論が活発に行われており、各部署における成功体験の共有などが進められているほか、「省エネかわら版」という会報も発行されています。ここで用いられる資料には、EneSCOPEで作成したものが活用されているとのことです。
「グラフなどによって分かりやすく示された情報により、各委員はむしろ楽しみながら問題点の抽出やそれに向けた対策の検討に取り組んでいます。まだ導入して日の浅いEneSCOPEですが、工場スローガンである"楽しく楽に"を省エネ対策の面で具現化してくれるツールとして、今後、多大なエネルギー削減効果を当工場にもたらしてくれることは間違いありません。EneSCOPEはなくてはならないインフラの1つとなっています」(阿部氏)
DIC北陸工場ではさらに、EneSCOPEとDCSの生産情報やエネルギーデータを連携し演算させることで、製品別のエネルギー原単位の見える化なども実現していきたいとしています。これによって製品ごとのコストがさらに明確になれば、より最適な生産戦略の立案にもつながるはずです。
「我々の山武に対する期待は、今回のEneSCOPEによるエネルギー消費量の可視化という枠にとどまるものではありません。広範な生産情報を取り込み見える化・解析することで、需要変動への迅速な対応や最適生産に向けた選択と集中といった局面でも役立てたいと考えています。そうした方向性も含めて、省エネを含めた生産管理パートナーとして山武には今後もさらなる提案を期待しています」(藤野氏)
※2012年3月以前の情報は、旧名称が使われているケースがあります。ご了承ください。
用語解説
※1 日化協(社団法人 日本化学工業協会)
化学品の製造・取り扱い、及びその関連事業を行う約190の企業会員と約80の団体会員(個別製品または製品群を扱う団体が主体)によって構成される業界団体。
※2 DCS(Distributed Control System)
分散制御システム。工場の生産システムなどを集中制御するのではなく、システムを構成する各装置・機器が制御装置を持つ。それらをネットワーク接続し、必要な情報をやりとりして相互監視・制御する。負荷の分散が図れ、安全でメンテナンス性の高いシステム構築が可能。
お客さま紹介

北陸工場
工場長
藤野 光雄氏

北陸工場
製造部長
前田 清和氏

北陸工場
原動課長
阿部 智氏

北陸エンジニアリンググループ
副グループマネージャー
北陸工場
省エネ担当課長
杉谷 博史氏
DIC株式会社 北陸工場

DIC株式会社 北陸工場
DIC株式会社 北陸工場
- 所在地/石川県白山市湊町ソ64-2
- 操業/1959年9月
- 事業内容/コーティング樹脂、スペシャリティ樹脂、ポリマ添加剤、製缶塗料などの生産
この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2009年11月号に掲載されたものです。