株式会社ブロードバンドタワー
投資対効果に優れたソリューションの導入で
既存の大規模サーバルームにおける電力削減を実現
高品質なデータセンターサービスの提供を通じて、顧客企業のIT活用に高度な付加価値を提供するブロードバンドタワー。同社では、既存の大規模サーバルームにおける空調機にかかわる省電力化を目指し、気流制御のためのソリューションを採用しました。事前のシミュレーションと綿密な工程設計により、稼働中の顧客システムに一切影響を及ぼすことなく導入を実現し、その成果は約8.8%の空調電力削減という形で表れています。

株式会社ブロードバンドタワー
建物分野 データセンター 省エネルギー コスト削減 データセンター向け環境ソリューション
導入製品・サービス

大規模サーバルームにおける空調電力の省エネ化が課題に
ITが企業のビジネス活動や人々の社会生活に欠かせないインフラとなる中で、情報システムの稼働を支えるデータセンターの果たす役割がますます大きくなっています。株式会社 ブロードバンドタワーは、東京に3カ所、関西に1カ所、計4カ所のデータセンターを通じて、コロケーション※1やホスティング※2をはじめとするデータセンターサービスを提供。顧客企業のIT活用に高度な付加価値を提供しています。
中でも、日本の通信インフラの心臓部ともいえる東京都千代田区に置かれた同社の第1サイトは、その基幹センターに位置付けられる拠点です。近年、企業の社会的責任(CSR)の観点からも社会的な要請が高まる電力削減に向けた施策に、早くから積極的に取り組み、大きな成果を上げてきました。
例えば、2010年2月には200m²のサーバルームにおいて、サーバ機器などが稼働するラックの各部位に小型温度計を設置しました。計測された温度に応じてエリアごとに床面のグリルパネル※3位置と、空調の風量を調整するといった取組みにより、データセンターの消費電力の最も多くの部分を占める空調電力を約20%削減することに成功したという実績があります。
「そうした取組みを重ねることで、当社では省電力のノウハウを積み上げてきています。しかし、別フロアにある1200m²という規模を持つサーバルームの省電力化を進めていこうとすると、スペースが非常に広いことやお客さまごとにラックの配列が一様でないといった事情もあり、既存のノウハウだけでは対応できないという課題に突き当たったのです」(高橋氏)
稼働中の既存サーバルームでシステムに影響を及ぼすことなく電力削減
ブロードバンドタワーでは、そうした課題を解消するためのソリューションの検討に着手。空調機器ベンダーの製品などを含む、いくつかの候補を綿密に比較検討した結果、採用したのが山武のデータセンター向け環境ソリューションAdaptivCOOL*でした。
「選定に当たって最重要の要件となったのが、導入に伴う作業が稼働中のお客さまのシステムに、絶対に影響を及ぼさないということ。そのため、室内環境が大きく変わる規模の工事は行えません。その点、AdaptivCOOLは、工事を行う前に綿密なCFDシミュレーション※4を実施し、床冷却ファンや温度センサを取り付ける場所の検討を十分に行った上で工事を行います。設置自体は比較的手軽な作業で済むことから、我々の要件を満たすことができると考えました。併せて、投資対効果が非常に高いと判断したことも導入の決め手となりました」(高橋氏)
「単に製品を売るというだけではなく、導入・運用に先立つコンサルティングやCFDシミュレーションによる熱気流解析の実施なども含めたサポートを一貫して提供してくれるという山武のスタンスにも、非常に心強いものを感じました」(吉野氏)
その後の導入工事においては、稼働する顧客のシステムに一切の影響を与えないようにするための細心の注意が払われました。具体的には、工事を3つのステップに分けて行うというものです。各ステップ完了時のフロア全体の温度状況についての詳細なシミュレーションを施工に先立って実施し、万全を期しました。
「特に難しかったのが、導入の対象となったサーバルームでは、お客さまのラックが配置されたエリアごとに、求められる空調温度が異なるということでした。つまり、3ステップにわたる導入期間中も通常の運用時と変わらず、そうしたエリアごとに設定された温度を維持できなければ、お客さまのシステムには、たとえ微細であっても性能面での影響が及ぶ可能性があるということで、工程の計画と調整は複雑を極めました。このことについても、山武が十数回にも及ぶシミュレーションを実施して、最適な工程を提示してくれました」(三浦氏)
具体的な導入手順は、サーバルームで稼働している33台の空調機について、まず第1ステップでは3台を停止。そして第2ステップで3台、第3ステップで2台を停止するといった具合に進められ、その間、必要な箇所に計15台の床冷却ファン、および30個の温度センサを設置。併せて、床面のグリルパネルやラック内のブランキングパネル※5を追加していきました。

サーバルーム内に15台設置されている床冷却ファン「HT-510」。その配置は、山武のCFDシミュレーションに基づく熱気流解析により決定されている。(グリルパネルを外した状態で撮影)

ラック上部に取り付けられた温度センサ。
空調機8台の停止を実現。消費電力の約8.8%削減に成功
こうした取組みの結果、ブロードバンドタワーでは当初の目的どおり、データセンターサービスの品質を損なうことなく、AdaptivCOOLの導入を完了。その結果、33台中8台の空調機を停止させることができました。これにより、既に自社の活動で達成していた20%の空調電力削減に加え、当該サーバルームの運用を続けながら、さらに空調電力を約8.8%削減することに成功しています。
「電力削減以外にも、停止させた8台の空調機を予備機として待機させることが可能となり、それによって稼働中の空調機の定期メンテナンスや故障などに対する冗長性が向上するという副次的な成果も得られています」(吉野氏)
今後、ブロードバンドタワーでは、千代田区にある第1サイトをはじめ、同社が展開するすべてのデータセンターにおける省電力の取組みのさらなる強化を目指していく構えです。そうした中で、今回のAdaptivCOOL導入において培われた様々なノウハウが活かされるものと期待されています。
「東日本大震災後、我が国は切実な電力不足に見舞われ、その後も継続的に企業や家庭での電力利用の効率化が切に求められている状況です。当社としても、そうした要請に応えるための施策に、なお一層注力していくことになります。山武には今後も、AdaptivCOOLに加えて空調機運転の自動制御や電力消費の可視化など、当社の取組みを支える提案を大いに期待しています」(高橋氏)

空調機電力と外気温度の相関
*AdaptivCOOLは、Degree Controls社の商標です。
※2012年3月以前の情報は、旧名称が使われているケースがあります。ご了承ください。
用語解説
※1 コロケーション
利用者のサーバ設備やネットワーク機器などをデータセンター内に設置する場所を提供するサービス。
※2 ホスティング
サーバ設備やネットワーク機器など、アプリケーションを動作させるのに必要なインフラ全般を提供するサービス。
※3 グリルパネル
床下を通ってきた冷風を吹き出すための格子状の穴が開いた床パネルの一種。
※4 CFD(Computational Fluid Dynamics)シミュレーション
数値流体力学によるコンピュータシミュレーション。山武のノウハウと併せて、サーバルーム内の熱だまりの状態をシミュレーションする。
※5 ブランキングパネル
ラックに収納されたサーバ機器へのエアフローを確保し、冷却効果をアップさせるために用いられるパネル。
お客さま紹介

執行役員
エンジニアリング統括
高橋 俊之氏

エンジニアリング統括グループ
CS準備室室長
プロフェッショナル
吉野 純生氏

エンジニアリング統括グループ
第1システム
マネージャー
三浦 幹雄氏
株式会社ブロードバンドタワー

株式会社ブロードバンドタワー
株式会社ブロードバンドタワー
- 本社所在地/東京都港区赤坂4-2-6 住友不動産新赤坂ビル7F
- 設立/2000年2月9日
- 事業内容/コンピュータプラットフォーム事業、Eコマースプラットフォーム事業
この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2012年03月号に掲載されたものです。