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横浜国際総合競技場(日産スタジアム)

大幅な省エネルギーを実現するESCO事業で
横浜市が目指す温暖化防止対策に貢献

2002 FIFA(国際サッカー連盟)ワールドカップの会場となり、国内外から集まった26万人の観客に感動を提供した日産スタジアム。本施設は省エネ法による第一種エネルギー管理指定工場でもあり、環境対策にも積極的に取り組んできました。今回、NEDOの補助事業とESCO事業を活用してより一層の省エネ化を目指し、横浜市の温暖化防止対策をまた一歩前進させました。

横浜国際総合競技場(日産スタジアム)

横浜国際総合競技場(日産スタジアム)

建物分野 その他(市場・産業) 省エネルギー エネルギーマネジメント 稼働改善 老朽化対策 ダイレクトデジタルコントローラ 建物のエネルギーマネジメント

導入製品・サービス

汎用コントローラ Infilex GC

汎用コントローラ Infilex GC

さらなる省エネ効果を期待し、ESCO事業の導入を決定

スポーツ医科学センター内、アリーナ前エントランスの照明をLED化。明るさはほとんど変わらず省エネルギーを実現。

スポーツ医科学センター内、アリーナ前エントランスの照明をLED化。明るさはほとんど変わらず省エネルギーを実現。

横浜国際総合競技場(日産スタジアム)は、横浜市が管理する新横浜公園整備事業の中核施設として1998年に開設されました。日産スタジアムは、ほかにも日産ウォーターパークやスポーツ医科学センターなどを併設しており、健康づくりの推進と競技力の向上、スポーツ振興を支えるスポーツ総合施設として、全国から利用者を集めています。

「地域に親しまれるスタジアムを目指し、隣接する鶴見川に和舟(わせん)を復活させる『舟運(しゅううん)復活プロジェクト』など、様々な市民協働事業にも協力しています」(本橋氏)

現在、横浜市では温暖化防止対策の一環として、市内の公共建築物の省エネ化とCO2排出量の削減に取り組んでいます。その1つが「横浜市公共建築物ESCO事業※1導入計画」に基づくESCO事業の実施です。日産スタジアムは省エネ法による第一種エネルギー管理指定工場に指定されており、このESCO事業の候補施設となっていました。

「日産スタジアムは、竣工時から市内のごみ焼却工場における廃棄物発電電力の利用や下水再生水、雨水の利用を取り入れるなど、『省エネスタジアム』として環境への配慮を強く意識した施設でした。しかし竣工後10年以上が過ぎ、設備の老朽化とともに省エネ対策が課題となっていました。そこで新たな省エネ対策としてESCO事業の実施を決定し、2009年4月に公募を実施しました」(田島氏)

※現在は第二種エネルギー管理指定工場。

「設備改修」と「運用見直し」この合わせ技が決め手

新設された下水再生水を利用するヒートポンプチラー。下水再生水を従来と比べて約2倍活用している。

新設された下水再生水を利用するヒートポンプチラー。下水再生水を従来と比べて約2倍活用している。

今回の事業提案者の募集に際して横浜市が求めた条件は、5%以上の省エネ率および5%以上のCO2排出量の削減、年間1000万円以上の光熱水費の削減でした。そして、参加事業者による提案が審査され、最優秀提案事業者として山武が選ばれました。その内容は、老朽化した設備の改修と運転・運用の改善による高効率化とを組み合わせたもので、既存の設備を最大限に有効利用しながらコストミニマムで省エネルギーを実現するという提案でした。具体的には、以前から横浜市が利用拡大を進めている下水再生水について、その排熱を熱源に積極的に活用することや老朽化した熱源設備の改修、空調機や給排気ファンのインバータ化、高効率ヒートポンプチラーの導入、照明機器のLED化などです。こうした様々な省エネ手法を巧みに組み合わせ、CO2を22.9%削減、光熱水費4700万円/年を削減する提案となったのです。この省エネ手法の有効性はNEDO※2にも認められ、「住宅・建築物高効率エネルギーシステム導入促進事業(建築に係るもの)」※3として採択されました。これにより最小限の負担でESCO事業の導入が可能になりました。

「山武の提案は、施設規模が非常に大きく検討範囲が広範囲に及ぶにもかかわらず、細部まで詳細に検討されていたことも、審査委員会における選定のポイントになりました」(田島氏)

2011年4月のESCOサービス開始を目指し、前年7月末から着工。施設の営業に支障を来さないよう、夜間を中心にした工事を行いました。

「日産スタジアムは鶴見川の氾濫時には近隣の民家への被害を防ぐための水がめとして機能する遊水池でもあり、1階部分のほとんどで資材などのじか置きが禁止されています。そのため、資材は使う分だけ搬入し、廃材もその都度、搬出をお願いするなど、制約の多い現場だったはずですが、特に問題もなく工事を終えることができました。スケジュール管理も正確で、施工においても安心して任せられました」(本橋氏)

蓄熱槽の状態などを監視しながら、蓄熱槽の蓄熱/放熱切替えを行う汎用コントローラ Infilex™ GCと熱交換器の圧力制御を行うデジタル指示調節計 R36。

蓄熱槽の状態などを監視しながら、蓄熱槽の蓄熱/放熱切替えを行う汎用コントローラ Infilex™ GCと熱交換器の圧力制御を行うデジタル指示調節計 R36。

電気を利用してお湯をつくるエコキュート。従来のガスボイラーと併用して最適運用を行い、コスト削減に貢献している。

電気を利用してお湯をつくるエコキュート。従来のガスボイラーと併用して最適運用を行い、コスト削減に貢献している。

節電と省エネルギーの両立が今後のESCO事業の課題

本格的な運用が始まり、実感できる省エネ効果も出始めています。

「日産スタジアムには多数のプールがあり、給湯の使用量が多いのが特徴です。給湯およびプールの水温を上げるために今まではガスのみを利用していましたが、今回のESCO提案でエコキュートを導入し電気とガスを最適な配分で利用しています。運用開始から2カ月間の結果ですが、全施設でガスの使用量を22%削減しコストダウンを実現しました。空調に関しては、既設の熱源管理用デジタルコントローラPARAMATRIX™を利用し状況に合わせて蓄熱槽とヒートポンプを選択、最適自動運転制御を行うシステムを導入しました。しかし今年は東日本大震災の影響があり、15%の節電に対応するために変則的な制御が必要となったため、自動制御と手動制御を切り替えて運用しています。不測の事態が発生しても状況に応じた省エネ運転ができる柔軟な制御システムとなっています」(池田氏)

節電効果が高いと期待されるLED照明も、設置場所や周囲の環境を考慮したタイプを選択し、設置後も現場の声を参考に照度の調整を行うなど、利用者の利便性を損なうことなく導入できています。

「照明のLED化で消費電力を75kW削減できました。以前と比べ約40%の省エネ効果です。今後もESCO事業としての契約に従った運用を期待していますが、震災による節電と省エネルギーを両立するため、お互いにアイデアを持ち寄りながら、さらなる省エネルギーの実現に取り組みたいと考えています」(大和田氏)

「日産スタジアムは使用するエネルギー量が多く、1%のエネルギーを削減するだけでも大きな効果を生みます。ESCO事業を活用して省エネ化や光熱水費の削減に道筋を立てたように、山武にはさらなる節電、省エネ対策の提案をしてほしいと期待しています」(本橋氏)

※2012年3月以前の情報は、旧名称が使われているケースがあります。ご了承ください。

用語解説

※1 ESCO(Energy Service COmpany)事業

工場やビルの省エネルギーに関する包括的なサービスの提供を通じて、そこで得られる効果をサービス提供者が保証する事業。資金の担保などを顧客が提供し、顧客が一切の償還義務を負う「ギャランティード・セイビングス契約」と顧客が償還業務を負わない「シェアード・セイビングス契約」という2つの契約形態がある。

※2 NEDO(New Energy and Industrial Technology Development Organization)

独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構。

※3 住宅・建築物高効率エネルギーシステム導入促進事業(建築に係るもの)

高効率エネルギーシステムを住宅・建築物に導入する場合、その費用の一部を補助する事業。

 

お客さま紹介

横浜市環境創造局 公園緑地部 公園緑地管理課 担当係長 本橋 健二氏
横浜市環境創造局
公園緑地部
公園緑地管理課
担当係長
本橋 健二氏
横浜市建築局 公共建築部 保全推進課 担当係長 田島 禎之氏
横浜市建築局
公共建築部
保全推進課
担当係長
田島 禎之氏
横浜市体育協会・横浜マリノス・管理JV共同事業体 技術監理部長 (横浜市体育協会) 大和田 芳朗氏
横浜市体育協会・横浜マリノス・管理JV共同事業体
技術監理部長
(横浜市体育協会)
大和田 芳朗氏
横浜市体育協会・横浜マリノス・管理JV共同事業体 施設管理部 (管理JV設備責任者) 池田 正利氏
横浜市体育協会・横浜マリノス・管理JV共同事業体
施設管理部
(管理JV設備責任者)
池田 正利氏

横浜国際総合競技場(日産スタジアム)

横浜国際総合競技場(日産スタジアム)

横浜国際総合競技場(日産スタジアム)

  • 所在地/神奈川県横浜市港北区小机町3300
  • 供用開始/1998年3月
  • 利用種目/陸上競技、サッカー、ラグビー、アメリカンフットボール、コンサート、文化芸能イベント、その他

この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2011年11月号に掲載されたものです。

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