株式会社エフテック 亀山事業所
エネルギー消費動向の"見える化"で生産工程におけるムダを徹底排除
エフテック 亀山事業所では、製品原価の低減、改正省エネ法への対応などを念頭に、生産の各工程において利用される電気やガス、エアなどのエネルギー消費動向について詳細に"見える化"するためのシステムを構築。その結果、これまでの月単位による集計では捉えることができなかったエネルギー消費にかかわる課題を把握し、ムダの解消に向けた施策を速やかに実施できる環境が整いました。

株式会社エフテック 亀山事業所
工場・プラント分野 自動車 省エネルギー コスト削減 運転監視・制御システム&ソフトウェア 流量計
生産にかかわるエネルギーの最適化が環境保全、製品原価低減に不可欠
ペダルやサスペンションなど自動車の足回りに関する重要保安部品を、独自の一貫体制により製造する株式会社エフテック。軽量化対応の「アルミ加工技術」や液圧によりパイプ材を成形する「ハイドロフォーミング」などの最新技術と高度な品質管理により、納期やコスト、安全性にかかわる顧客のシビアなニーズに応えています。一方、同社は「豊かな地球環境を私たちの行動で守り続けます」をスローガンに掲げるなど、環境に配慮した製品づくりを真摯(しんし)に追求していることでも知られます。
「特に生産工程におけるエネルギー消費の最適化は、環境保全はもちろん、製品原価の低減という観点からも不可欠です。そこで亀山事業所では、2008年ごろから、改正省エネ法※への対応も見据える形で、グループ内のほかの生産拠点に先駆け、省エネ対策の重要なベースとなるエネルギー管理におけるインフラ整備に向けた取組みに着手することになりました」(若林氏)
「具体的には、自動車部品の溶接、プレス、塗装の各工程において利用される電気やガス、エア(圧縮空気)などの消費動向を、まずはシステムによって"見える化"し、将来的にはその情報に基づいて生産ライン単位、さらには製品ごとの消費量を明らかにして、生産活動におけるエネルギー消費の最適化につなげていきたいと考えました」(那須氏)
エネルギー管理と生産の稼働監視が統合化されたソリューション

事務所内に設置されたEneSCOPE及びHarmonasの監視端末。生産ラインの稼働管理を行いながら、上段のEneSCOPEで生産に使用している電気やガス、エアなどのエネルギー消費状況が確認できる。
その後、亀山事業所では、システムの仕様が固まった2009年6月ごろ、4社のベンダーに対して提案を依頼。綿密に比較検討した結果、同事業所が選択したのが工場向け省エネルギーソリューションであるENEOPT(エネオプト)™を提案していた山武でした。
選定の最大のポイントは、唯一、山武の提案が、エネルギー管理と生産ラインの稼働監視を包括的に捉えた統合的なソリューションであったということ。これに関し、山武では提案時に、ENEOPTの中核コンポーネントである"見える化"ツールとしてエネルギー管理システム EneSCOPE™の画面を使ったデモを、専門のプレゼンテーション要員であるエネスタッフにより実施しています。
「デモでは、エネルギー消費の現状を分かりやすく可視化できることはもちろん、製品の出来高や設備の稼働時間など、生産工程の情報とリンクした形で、製品原単位によるエネルギーの消費量を容易に把握できることが示されました。これにより、ENEOPTの選択こそが、我々の描くロードマップに合致するものであるということを確信しました」(前田氏)
亀山事業所がENEOPTの採用を決定したのが2009年8月。その後、速やかにシステムや機器の導入が開始され、2009年11月下旬の完了を目指して作業が進められました。今回は、EneSCOPEをはじめ、各種流量計やそれらと連動している各ユーティリティ設備の運転・制御を行う協調オートメーション・システム Harmonas™が導入されています。
「亀山事業所では、2009年11月5~6日の日程で、当社グループの海外拠点を招いて実施する環境対策をテーマにした世界環境会議の開催を予定していたことから、導入作業もそれに合わせてスケジュールを設定しました。そうした非常に厳しい工期の中で、手際の良い対応で予定どおりに作業を完了してくれました。おかげで、全世界10拠点から集まった各国の担当者に導入後のシステムを見てもらい、高い評価を得ることができました」(那須氏)

生産現場に設置された流量計。エア管理用メータMCFと気体用マスフローメータCMS。

HarmonasとPLCなどのリモートコントローラを連携させるゲートウェイのDGPLII。DGPLIIを利用することで将来の拡張にも柔軟に対応できる。
各種エネルギーの消費動向を時間単位で詳細に把握
稼働後のシステムは、同事業所のエネルギー管理において数々の成果を挙げています。特に重要なポイントとなっているのが、これまで月単位で集計されていた各種エネルギーの消費動向が、時間単位で把握できるようになったことです。
「例えば、生産が休止している時間帯なのにどこかでエアが消費されているとか、突発的に電力消費量が跳ね上がることがあることも明らかになりました。これは、月単位での集計では決して捉えることができなかったでしょう。起こっていることを認識し、直ちに必要な対処を行うことで、これまで気づかないところで発生していたエネルギー消費のムダが確実に解消されてきています」(前田氏)
「画面の見やすさも、担当者からは非常に好評です。各生産ラインにおける電気、ガス、エアの消費状況がグラフなどにより分かりやすく示されるほか、汎用アプリケーションのような操作性で誰にでも容易に使いこなすことができます。また、ネットワーク環境さえあればどこからでもアクセスできることも大きなメリットです。既に本社側の環境プロジェクトの担当者が、Web経由でこのシステムにアクセスし、必要な情報を閲覧して管理業務に役立てており、改正省エネ法に向けた対応においても大いに威力を発揮してくれるものと考えます」(神氏)
今後、亀山事業所では当初の予定どおり、今回のシステムを生産側の稼働監視とも連動させながら、生産ラインや製品原単位でのエネルギー消費量の把握という要求も満たしていくことになります。さらにEneSCOPEを活用し、同事業所の省エネシステムや改善活動を外部のお客さまにも見ていただくオープンハウスも開催されました。
「そうした仕組みが整備でき次第、エネルギー管理担当者だけではなく、製造現場の担当者にも画面を通じて情報を"見せる化"していきたいと考えています。それによって、製造現場での省エネルギーに対するモチベーションが喚起され、ムダ解消に向けた取組みをさらに加速させていけるものと考えています。今後は、今回の情報可視化の先にある、さらに一歩踏み込んだ省エネ対策についての提案を大いに期待しています」(若林氏)
※2012年3月以前の情報は、旧名称が使われているケースがあります。ご了承ください。
用語解説
※ 改正省エネ法
従来の「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(通称:省エネ法)を改正し、2010年4月に本格施行された法律。エネルギー使用量の把握と管理の対象が工場や建物単位から、事業所を統括する企業全体に拡大されていることが特徴。
お客さま紹介

上席執行役員
亀山事業所
所長
若林 博美氏

亀山事業所
製造ブロック
ブロックリーダー
那須 和久氏

亀山事業所
製造ブロック
生産技術課
課長
前田 恭宏氏

亀山事業所
製造ブロック
生産技術課
設備管理係
係長
神 久雄氏
株式会社エフテック 亀山事業所

株式会社エフテック 亀山事業所
株式会社エフテック 亀山事業所
- 所在地/三重県亀山市白木町鷺山395-43
- 設立/1967年5月
- 事業内容/自動車部品及びそれに伴う金型、機械器具などの開発・製造・販売
この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2010年07月号に掲載されたものです。