HOME > 納入事例 > アストモスエネルギー株式会社

アストモスエネルギー株式会社

複雑な物流網の最適化に成功 全社最適の意識改革に

2006年に設立されたアストモスエネルギー。LPガス業界の複雑な物流網見直しと再構築、コスト削減による利益の最大化を実現するために最適化システムを導入しました。今では同社の業務フローの中に幅広く定着し、全社利益を追求するために欠かせないツールとなっています。

卸事業者から小売業者への供給拠点となる充てん所は、LPガスを2~500kgの容器(ボンベ)に小分けする機能を持つ。最近では、複数の事業者が所有する共同充てん所で合理化を図る例も増えている。

卸事業者から小売業者への供給拠点となる充てん所は、LPガスを2~500kgの容器(ボンベ)に小分けする機能を持つ。最近では、複数の事業者が所有する共同充てん所で合理化を図る例も増えている。

工場・プラント分野 電力・ガス コスト削減 安定稼働 稼働改善

導入製品・サービス

物流最適化システム

LPガスの安定供給を担う世界のリーディングカンパニー

2006年4月1日、出光ガスアンドライフ株式会社と三菱液化ガス株式会社、三菱商事株式会社LPガス輸入部門の事業統合によって設立されたのが、アストモスエネルギー株式会社です。合併により、同社のLPガス※1取扱量は専業会社として世界一を誇り、国内総需要約1800万トンのうち約20%を取り扱うLPガス業界のリーディングカンパニーとなりました。

LPガスは、全国約5000万世帯の過半数が利用する基幹エネルギーのひとつであり、その供給エリアは日本全土の90%以上をカバーしています。アストモスエネルギーは、国内に9カ所の輸入・生産基地、6カ所の2次基地を配置。タンク能力は元売りとして国内最大規模を誇ります。また、全国に約400カ所の充てん所、約300カ所のオートガス・スタンドの物流網を構築し、全国にくまなくLPガスの安定供給を実現しています。

最適化手法の導入により物流コストの削減を実現

最適化システムは、使い慣れた表計算ソフトを用い簡単に入力できる。試算結果はビジュアル化して表示され、誰が見ても分かりやすいように工夫されている

最適化システムは、使い慣れた表計算ソフトを用い簡単に入力できる。試算結果はビジュアル化して表示され、誰が見ても分かりやすいように工夫されている

合併に際して課題となったのが、重複する基地の統廃合を含む物流網の整理・再構築を行い、物流経路を最適化してコストの削減を図ることでした。 「当社の物流コストは総コストの約半分を占めます。コストを明確に表し、複数の物流パターンを比較検討する手法を導入することによってムダを削減し、各社の事業の単なる合体ではなく、合併のシナジー効果である利益の最大化を実現できないかと考えました」(矢木氏)

そこで検討されたのが、数理計画法※2をベースにしユーザーニーズに合った利益最大化プログラムが開発できる、最適化システム※3の導入です。

「まず産ガス国から消費地に至る複雑な物流経路や元売企業間でのバーター取引※4など、LPガス業界特有の条件にきめ細かく対応したモデルを構築し、最適化システムの効果を検証しました」(矢木氏)

構築されたモデルに、購入・販売の量や単価、基地情報や拠点間の輸送コスト、バーター取引の条件(単価や基地使用料)などを入力し、最適化試算を行うことにより、トータルコストが最低となる最適な物流ルートなどの条件が算出されます。検証の結果、十分な改善効果が期待できると判断され、新会社の物流計画の策定に最適化システムが利用されることになりました

「基地の統廃合、出荷基地から配送エリアの境界、バーター契約の損益評価、輸入のタイミングなどの試算を行いました。企業としての全体最適という視点では、従来とは異なるオペレーションが最適とされるケースも出てきます。その場合にも、試算結果を基にディスカッションと部分的実施、効果確認を繰り返し行いました。こうした積み重ねにより、実際にコストが削減されていることを示し、社内の信頼を得てきました。最適化は単なる机上の計算でしかないという固定観念を打破し、全社での活用につなげていきました」(松田氏)

昨年1年間に最適化システムの導入効果として削減された物流コストは、国内物流コストの約2%にも達しています。

産ガス国などから輸入されるLPガスは、低温・液化の状態で国内の輸入基地(1次基地)に運ばれ、貯蔵され、さらに受け入れ基地(2次基地)に運ばれる。ここでタンクローリーなどに積み込まれ、各地にあるLPガス充てん所に輸送される。充てん所では容器に小分け充てんし、消費先までトラックで配送する。

産ガス国などから輸入されるLPガスは、低温・液化の状態で国内の輸入基地(1次基地)に運ばれ、貯蔵され、さらに受け入れ基地(2次基地)に運ばれる。ここでタンクローリーなどに積み込まれ、各地にあるLPガス充てん所に輸送される。充てん所では容器に小分け充てんし、消費先までトラックで配送する。

全社最適を追求する業務フローへの定着

刻々と変化する産ガス国からの輸入価格やガス需要の季節変化を考慮した輸入タイミングの最適化は、基地のタンクを効率よく稼動させ、物流コスト削減に大きな意味を持つ。

刻々と変化する産ガス国からの輸入価格やガス需要の季節変化を考慮した輸入タイミングの最適化は、基地のタンクを効率よく稼動させ、物流コスト削減に大きな意味を持つ。

現在のアストモスエネルギーでは、最適化試算の実施とその結果の活用が、業務フローとして幅広く定着してきています。

「最適化システムから算出されたトータルコストが最小となる条件を用いて、バーター契約の評価、物流改善、基地配置検討など、意思決定の際の大きな判断材料として使われています。"全社最適"というキーワードが確実に根付き、部署ごとの行動計画から全社の中期経営計画にまで、この言葉が使われるようになりました」(松田氏)

「最適化システムは、社員同士が議論する際の共通の"ものさし"として一元化されたデータを提供してくれます。それをベースに、全社員が全社利益の最大化という共通の目的を追求できるようになりました。導入の最大の効果はそうした社員の意識改革にあるのかもしれません」(高橋氏)

2007年5月に刷新された同社の基幹情報システムでは、最適化試算を行うために必要な情報を、物流関連のものだけではなく販売関連のデータを含めて定型化され、最適化システムと効率的にリンクできる形に改めました。このことを見ても、最適化システムに対する同社の評価の高さと、今後の活用への期待の大きさが察せられます。

「今後は物流だけではなく、販売などの業務の全フローを含めた経営活動全体を最適化することも期待されています」(矢木氏)

さらにその先には、LPガス業界のリーディングカンパニーとして業界全体の複雑な物流を改善し、最適化していくことも視野に入れる必要があるといいます。最適化システムに寄せられる期待は、ますます大きく膨らんでいます。

用語解説

※1 LPガス

家庭・業務用をはじめとして、工業用、都市ガス用、自動車用、化学原料用など幅広い用途で使われる液化石油ガス(Liquefied Petroleum Gas)には、生産から消費までの二酸化炭素(CO2)排出量が非常に少ないという環境特性、加圧・加冷によって容易に液化できる可搬性、さらに高い燃焼性などの特長を持つ。

※2 数理計画法

社会的な問題をはじめとする、工学、自然科学などあらゆる分野のさまざまな問題を数理的にモデル化し、最適な答えを与える手法。

※3 最適化システム

生産活動の中で利益を最大化することを目的に、与えられた自由度の中で、数多くの組み合わせの中から最適解を選択し、利益拡大に貢献するシステム。経営企画、需給、購買、販売、製造部のための最適化シミュレーション環境を提供し、さまざまな制約を満たした上で、利益性の最大化または改善を行う。

※4 バーター取引

国内におけるLPガスの物流拠点数は、石油のそれに比べると少ない。そこで元売業各社は、物流を効率化するため商品を相互に物々交換形式でやり取り(交換ジョイント)して、物流コストの上昇を抑えている。

お客さま紹介

アストモスエネルギー株式会社 供給本部 需給部 需給部長 矢木 勉氏
アストモスエネルギー株式会社
供給本部 需給部
需給部長
矢木 勉氏
アストモスエネルギー株式会社 供給本部 需給部 マネージャー 需給・基地担当 松田 力氏
アストモスエネルギー株式会社
供給本部 需給部
マネージャー
需給・基地担当
松田 力氏
アストモスエネルギー株式会社 供給本部 需給部 高橋 順氏
アストモスエネルギー株式会社
供給本部 需給部
高橋 順氏

アストモスエネルギー株式会社

アストモスエネルギー株式会社

アストモスエネルギー株式会社

  • 所在地/東京都千代田区丸の内1-8-2 第一鉄鋼ビルディング4F
  • 創業/1962年
  • 事業内容/液化石油ガスの輸入・仕入・販売、船舶の所有・賃貸借・売買

この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2009年06月号に掲載されたものです。

工場・プラント分野の納入事例

コスト削減の納入事例

安定稼働の納入事例

稼働改善の納入事例