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国際石油開発帝石株式会社

熱量調整のプロセスシミュレーションを導入し、都市ガスの安定供給に加え、省エネルギー・省コストにも貢献

国際石油開発帝石の山王熱量調整所では、ガス供給会社側の運用状況により原料ガスの組成が急激に変動することに対応するため、熱量調整プロセス制御の充実を図りました。多様な組成の原料ガスを混合する場合においても、熱量を最適に調整する制御を構築するためプロセスシミュレーションも導入。都市ガスのさらなる安定供給、省エネルギー・省コストに貢献しています。

国際石油開発帝石の新潟県越路原プラントガス処理施設

国際石油開発帝石の新潟県越路原プラントガス処理施設

工場・プラント分野 電力・ガス 省エネルギー コスト削減 運転監視・制御システム&ソフトウェア 分析計

環境にやさしい天然ガスを用い安定した都市ガスを供給

石油・天然ガスの鉱区取得から、探鉱、生産、精製・輸送・販売までをグローバルな規模で展開する国際石油開発帝石株式会社は、国際石油開発帝石ホールディングス株式会社が、2008年に国際石油開発株式会社と帝国石油株式会社を吸収合併し新たにスタートした国内最大の石油・天然ガス開発会社です。

京葉パイプライン株式会社が受託運用を行っている国際石油開発帝石の山王熱量調整所は、3カ所より組成・熱量の異なる天然の原料ガスを受け入れています。ガス事業法で定められた都市ガスの熱量は45MJ/Nm³ですが、これらを混合したガスが持つ熱量は平均で約39.5MJ/Nm³のため、より高い熱量を持つ液化石油ガス(LPG)を投入して熱量を調整し、製品ガスを生成しています。

「製品ガスの熱量は品質管理上、一定範囲内に制御することが求められます。しかし、組成の違う3カ所の原料ガスの混合比率は逐次変化するため、熱量は常に変動します。従って、その変動に追従してLPGの投入量を適正に調節する必要があります」(山田氏)

新たな原料ガスの導入を前にプロセスシミュレーションで事前検証

山王熱量調整所の従来の熱量調整プロセスでは、プロセス全体を制御する協調オートメーション・システムHarmonas™で、熱量のフィードフォワード制御※1及びフィードバック制御※2を行い、投入するLPGの量を決定していました。

しかし、2007年12月よりガス供給会社側3カ所のうち1カ所の運用状況が大きく変わり、不活性ガスである窒素などを含むBOG※3の混合割合が増加することが予測されていました。

「従来、リアルタイム熱伝導率計測に基づく製品ガス熱量計測値に対して、その補正係数を運転員が、その都度手動で入力することで投入するLPG量の調整を行っていました。しかし、BOGのように窒素量の変動が不定期に、しかも急激に起こる状況には、人手ではとても対応できません」(佐々木氏)

そこで、発熱量測定ガスクロマトグラフHGC303でLPGによる熱量調整後のガス熱量測定と組成分析を行い、熱伝導度式熱量計SGA400と組み合わせることで、より正確な熱量を計測することができる複合計測システムの開発を開始しました。これにより、最終LPG混合量を決定するフィードバック制御部での計測・制御の大幅な改善を見込みました。

さらに、新たにプロセスシミュレーションシステムという仮想プラントをコンピュータ上に構築することにより、原料ガスの流量及び組成の変動で起こる熱量変化に対する製品ガス熱量制御性を検証することで、今回の制御設計の妥当性を事前に確認することができました。

「誰も体験したことのないような熱量変動を起こすBOGを受け入れるに当たり、リアルなプロセスシミュレーションを実施していただいたことで、かなり大きな変動でも追従できることが分かり、今回導入した熱量調整プロセス制御の信頼性は大きく高まりました」(村田氏)

プロセスシミュレーションを通して安定制御を行うためのデータが収集できたことは、実運転を開始する際の試運転時間の短縮にもつながりました。

このようなきめ細かな計測・制御を行うことにより、頻繁な窒素量などの不活性成分量変動にも対応した自動補正が可能になりました。

SGA400 入口熱量計測を行うSGA400。混合ガスの熱量計測をリアルタイムで行う

SGA400 入口熱量計測を行うSGA400。混合ガスの熱量計測をリアルタイムで行う

Harmonas 熱量調整所全体の安全制御を担うHarmonas。ガス事業法で定められた発熱量測定として、熱量調整後の出口熱量をHGC303が測定しデータ管理している

Harmonas 熱量調整所全体の安全制御を担うHarmonas。ガス事業法で定められた発熱量測定として、熱量調整後の出口熱量をHGC303が測定しデータ管理している

HGC303 ガス事業法対応の発熱量測定ガスクロマトグラフHGC303。熱量補正を行った処理ガスの熱量を5分周期で計測することに加え、ガスの組成も分析することができる

HGC303 ガス事業法対応の発熱量測定ガスクロマトグラフHGC303。熱量補正を行った処理ガスの熱量を5分周期で計測することに加え、ガスの組成も分析することができる

複合計測システム

正確な熱量計測で省エネルギー・省コストを実現

「フィードバック制御部における複合熱量計測システムの導入による計測と制御性を充実させたことによって、適正なLPGの投入が可能となりました。昨年と比較してもLPGの添加率は大きく下がっており、製品ガスの熱量は非常に安定しています」(佐々木氏)

「ガスの熱量調整では、製品ガスの熱量が許容範囲を超えて低下し、都市ガスの供給が緊急停止してしまうことが最大のリスクです。そのため従来は、熱量の低下を警戒し、常に多めのLPGを投入する傾向にありました。しかし、プロセスシミュレーションによる制御設計の事前の確認及びフィードバック制御部における複合熱量計測システムの導入により、正確な熱量を基にした自動制御が可能になりました。これによりLPGの余裕を持った投与が不要になり、安定供給に加え、省エネルギー・省コストにも貢献できました」(新田氏)

製品やシステムへの信頼感はもちろん、山武のしっかりしたメンテナンス体制も、山王熱量調整所の大きな安心材料になっています。

「変動要素の多い原料ガスと安定した製品ガスの正確な熱量計測と制御を行うDCS※4、それらのデータを基に制御性を検証するプロセスシミュレーションまで、1社で対応できるところが山武に任せたポイントでした。プロセス制御に関するノウハウや実績を持つ人たちが、システム立ち上げ前のコンサルティングから現場ニーズに応えるシステム構築、導入後のメンテナンス対応までを担当してくれるという付加価値は非常に大きいと感じています」(国際石油開発帝石 吉田氏)

※2012年3月以前の情報は、旧名称が使われているケースがあります。ご了承ください。

用語解説

※1 フィードフォワード制御

制御を乱す外乱要因による影響が現れる前に検知し、その影響を極力抑えるように事前に修正動作を行う制御

※2 フィードバック制御

現在の状態を検出してから、目標値に近づける動作を行う制御。外乱要因が発生した場合は、その影響が出た時点で適正値に戻す動作を行う

※3 BOG(Boil Off Gas)

軽質気化ガス。LNGのような低温液体を輸送・貯蔵する場合に、外部からの自然入熱などにより気化したガスのこと

※4 DCS(Distributed Control System)

分散制御システム。集中制御と違い、複数のコントローラで分散制御を行うため、負担の分散を図り安全でメンテナンス性の良いシステムが構築可能

国際石油開発帝石株式会社

国際石油開発帝石株式会社

国際石油開発帝石株式会社

  • 所在地/東京都港区赤坂5-3-1 赤坂Bizタワー
  • 設立/2006年4月
  • 主な事業内容/石油・天然ガス、その他の鉱物資源の調査、探鉱、開発、生産、販売及びそれらを行う企業に対する投融資

この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2009年05月号に掲載されたものです。

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