池袋地域冷暖房株式会社
エネルギー最適運転支援システムによる一次エネルギーのベストミックスで 高効率化、省エネルギー、CO2削減を実現
創業から30年を経た地域冷暖房の熱供給プラント。その“リコンストラクション”は、最新設備への更新のみならず、熱源機器から中央監視装置も含めて最適化された高効率で省エネルギー性の高い再構築を目指しました。新しいプラントとして生まれ変わったいま、エネルギー最適運転支援システム(U-OPT™)(現:熱源設備/動力プラント 全体最適化パッケージ U-OPT™)により高効率な運転を可能にするとともに、CO2排出量、一次エネルギー消費量などの大幅な削減を実現しています。

池袋地域冷暖房株式会社
工場・プラント分野 電力・ガス 省エネルギー 運転監視・制御システム&ソフトウェア
導入製品・サービス
30年にわたり24時間365日安全で安定した熱供給を継続
池袋副都心開発事業の一環として、サンシャインシティおよびその周辺に熱供給を行うことを目的に設立されたのが、池袋地域冷暖房株式会社です。サンシャインシティのオープンに合わせて1978年4月に操業を開始、以来、30年にわたって24時間365日安全で安定した熱供給を続けています。
しかし、運用開始から20年を経たころから、経年劣化に伴う熱源機器の故障や性能低下、オフィスのOA化推進による冷熱負荷の増大など熱供給需要の要因から、効率的な運用が難しいという課題が浮上してきました。そこで1999年から高効率化、省エネルギー、地球温暖化防止を目的としたプラントの再構築「リコンストラクション」がスタートしました。
「環境に配慮し、熱の安定供給を継続するためのプラントのあるべき姿を追求するなかで、単なる最新機器へのリプレース『設備の更新』ではなく、熱源機器から中央監視装置も含めて最適化された高効率で省エネルギー性の高いプラントへの『再構築』という答えにたどり着きました。それが、今回の『リコンストラクション』です」(澁谷氏)
日々変わる熱需要に対応する最適な熱製造パターンを予測

さまざまなデータが集約される中央監視室

熱製造パターン予測と熱源設備の運転実績を表示

中央監視室からのデータを携帯端末(PDA)で確認しながら流量計の値をチェック
プロジェクトでは、まずプラント全体を対象とした劣化診断を行い、経年での機器性能を確認しました。この結果を基に、環境負荷低減を第一の目的として2000年度にはプラント全体を更新する基本設計を、2001年度には実施計画をまとめ、2002年4月から工事に着手。足かけ7年の工事期間を経て2008年3月に無事竣工を迎えました。
熱源システムの再構築では従来のターボ冷凍機(電気)、吸収式冷凍機(ガス)に加え、蓄熱槽に氷を造る氷蓄熱システム※1(電気)を導入しました。また、低負荷時の運転のムダを解決するために冷水過流量制御を採用しました。これら最新の熱源機器などの監視・制御を担っているのが山武の協調オートメーション・システムHarmonas™と、高効率な運転を可能にするエネルギー最適運転支援システム(U-OPT)(現:熱源設備/動力プラント 全体最適化パッケージ U-OPT)です。
「リコンストラクション時も平常通りの安定的な熱供給を続けることが大命題です。システム、プラントを止めることなくリニューアルできる信頼性と高機能を高く評価し、Harmonasを採用しました」(平井氏)
また、エネルギー最適運転支援システムで、より効率的なプラント運用を行うために、運転管理側の助言に従い計測ポイントを増やし、きめ細かく設備機器の運用状況をモニタリングしています。各施設の利用状況による負荷変動に対して、設備の運転状況に加え毎日の天気予測データや温度だけでなく湿度も考慮に入れた不快指数などを入力。プラントの熱製造パターン予測を行い、グラフ化することで、オペレータに最適な運用をガイダンスします。これらはすべて池袋地域冷暖房の30年間の運転ノウハウに基づいて構築されたものです。
「Harmonasによる運転監視、そしてエネルギー最適運転支援システムのシミュレーションにより、最新の熱源機器の能力、システムを最大限に活用するための制御と運用が可能となりました。季節や日々の状況に応じてターボ冷凍機、吸収式冷凍機、氷蓄熱システムの最適な併用ができ、一次エネルギーの電気、ガスをベストミックスすることで高効率化が図れます。これがCO2や一次エネルギーの削減にもつながっています」(山口氏)
「熱負荷の増減が激しい商業施設では全自動の運転は難しく、最後はオペレータの判断に委ねられます。その決断をするために有効なデータをエネルギー最適運転支援システムは目に見える形で提供してくれます。我々の30年間の努力・成果が報いられたと思うと感激です」(平井氏)
目標値を大きく上回るリコンストラクション効果

「最適運転を行うためにこんなデータが欲しい、目に見えるものにして欲しいという課題に対して山武は迅速に対応し、我々のニーズに合致したシステムを構築してくれました。今後も環境に優しく、安全、安定した熱供給を継続するための提案に期待しています」(山口氏)
「ターボ、吸収式冷凍機の運用と氷蓄熱システムの放熱について最適なブレンドの仕方を突き詰めていけば、目標値以上の実績が残せると確信しています。今後もエネルギー最適運転支援システムを活用し、地道な取組みを基にさらなる効率化を目指します」(平井氏)
※2012年3月以前の情報は、旧名称が使われているケースがあります。ご了承ください。
用語解説
※1 氷蓄熱システム
電力負荷・冷暖房需要の少ない夜間にターボ冷凍機を運転して蓄熱槽に氷を造り、冷房需要の多い昼間にその氷を使って冷水を造る。夜間電力は、化石燃料の使用割合が低いためCO2の排出量が少なく、また昼間の電力消費量のピークカットができる。そのため、電力負荷を平準化でき、電力設備を効率良く活用できる。
※2 システムCOP(System Coefficient of Performance)
建物の用途や規模によらず熱源性能を評価できる指標。熱源機器の発生熱量とエネルギー消費量(熱源機器および補機を含む一次エネルギー換算値)との比。
※3 地域冷暖房
一定地域内の建物に、熱供給設備から冷水や蒸気、温水を供給し、冷房や暖房、給湯などを行う仕組み。供給先ビル側は熱源設備を持つ必要がなく、省エネルギーや環境負荷低減の効果が期待できる。
お客さま紹介

常務取締役
澁谷 俊典氏

技術部
次長
平井 克二郎氏

技術部
副長
山口 誠氏
池袋地域冷暖房株式会社

池袋地域冷暖房株式会社
池袋地域冷暖房株式会社
- 所在地/東京都豊島区東池袋三丁目1番1号サンシャイン60
- 設立/1973年
- 主な事業内容/サンシャインシティおよびその周辺における冷温熱の供給
この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2009年02月号に掲載されたものです。