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長崎市上下水道局 手熊浄水場

水の安定供給で市民の安心を見守る制御の力で安全な水を提供

市民のライフラインの根幹を成す「水道水」のさらなる安定供給を目指し長崎市手熊浄水場の監視装置を更新。遠隔監視をしていた浄水場や複数のポンプ場、配水池の運転情報を一元管理し、管理業務の効率化と安全で安定した水の供給を実現しました。加えて、運転支援装置の導入により需要予測を行うことでオペレータの運転操作負荷軽減と厳密な運用に貢献しています。

手熊浄水場は東シナ海を望む高台に立つ。<br />
浄水処理中の水は右から左の池へとゆっくりと流れている。

手熊浄水場は東シナ海を望む高台に立つ。
浄水処理中の水は右から左の池へとゆっくりと流れている。

工場・プラント分野 上・下水道 安定稼働 稼働改善 運転監視・制御システム&ソフトウェア

渇水と未給水区域の解消を目指し上水道をさらに強化

九州北西部に位置し、海と山に面した風光明媚な街の印象が強い長崎市。そんな長崎市ですが原水が少なく「長崎砂漠」とも呼ばれ、昔から井戸が多く活用されてきました。渇水の対策と未給水区域の解消を目標に昭和40年代からダムや浄水場の整備が重ねられ、現在では15のダムと46の浄水場を有しています。1975年に完成した手熊浄水場は、長崎市全体の約5割の水を供給し、1日に58000m³の浄水処理を行っており、手熊水系では高台の家庭などに水道水を供給するための設備であるポンプ場が16カ所稼働しています。また、1984年には長崎市の魚市場移転に伴い、無人運転の三重浄水場が新設され、手熊浄水場での遠隔監視が開始されました。

長崎市のライフラインを支える浄水場として進化してきた手熊浄水場ですが、三重浄水場や各ポンプ場・配水池の運転監視はしているものの運用の統合化はされておらず、設備ごとの計器を操作する手動での運用となっていました。

「手熊浄水場の監視設備の老朽化対策と上水道統合整備事業に伴う処理能力増強に対応するため、2003年から5カ年計画で手熊浄水場監視装置の更新事業がスタートしました」(井手氏:導入時は水道部浄水課に所属)

場外設備を含めた一元管理で監視業務の効率化が実現

情報の一元管理を実現したIndustrial-DEO。トレンドグラフを常時表示し、運用データの異常を早期に発見し処置を行う。後方の大画面表示装置では場外設備の浄水場やポンプ場・配水池の状態を表示し、オペレータ間で情報の共有を図っている。

情報の一元管理を実現したIndustrial-DEO。トレンドグラフを常時表示し、運用データの異常を早期に発見し処置を行う。後方の大画面表示装置では場外設備の浄水場やポンプ場・配水池の状態を表示し、オペレータ間で情報の共有を図っている。

シミュレーション・運転教育用に導入された運転支援装置。今では日常の運転管理にも活用されている。

シミュレーション・運転教育用に導入された運転支援装置。今では日常の運転管理にも活用されている。

事業の公告を受け、今村電気商会・第三電機・山武の3社JVは、浄水場の制御と場外設備の運転監視を一元化する部分を高信頼オープン・オートメーション・システム Industrial-DEO™が行い、シミュレーション・運転教育の部分を運転支援装置で行うシステムを提案。三重浄水場の制御は他社メーカーが行い、そのシステムとIndustrial-DEOを接続し総合的に監視する形で手熊浄水場の監視制御装置は山武を含む3社JVが受注する運びとなりました。

ライフラインである水を供給する浄水場は、長時間の停止は絶対に許されません。旧システムの大量で複雑な配線の検証から始め、浄水場を稼働しながらの更新でしたが大きなトラブルもなく2007年7月にIndustrial-DEOへの切換えが完了しました。 「24時間プロセスで動いている浄水場の工事をトラブルなく完了できたのは、相当な事前の準備と計画が必要だったはずです。山武は確実にやり遂げてくれました」(元村氏)

そして2008年2月、本格稼働を開始しました。今までのシステムでは、トレンド機能がなかったため記録を残す目的でオペレータが検針を行っていました。今回の更新により全ポイントのデータを長期保存することが可能になったことで、記録保存のためだけではなく、日常の運転業務や制御・監視のためにトレンドグラフを有効活用しています。

「監視制御装置では、トレンドグラフを中心に監視を行っています。微妙な動きをトレンドで発見することができるため事前の対応も可能になりました。また、トラブルが発生した際にも運用データが長期保存されているので、その時点までさかのぼってデータの検証を行い原因を探ることができます」(元村氏)

「浄水場の運用に不可欠な沈澱池※1の沈澱物をかき寄せる機械を今までは24時間連続稼働していましたが、浄水場の状態を見ながら1日8時間の運転で問題なく運用できるようになりました。これが省エネルギーにつながり電力やメンテナンスコストが削減しました」(井手氏)

浄水場や複数のポンプ場・配水池を一元管理できるようになったことで、警報が発生した場合もどこで発生した警報なのかの判別が容易になったといいます。

「夜間は2人で監視業務を行っているため、台風などの悪天候の際には警報が多く発生し不安に感じることもありました。警報の発生個所も瞬時に判断がつくようになり、安心して業務を遂行できます」(元村氏)

運転支援装置がIndustrial-DEOと連携し、最適な水運用を予測

一方、水運用面でも様々な効果が表れています。運転支援装置は、オンラインとしての水運用最適化機能及びオフラインとして運転教育用シミュレータ機能を有しています。オンライン水運用機能は、Industrial-DEOから取水量、配水池の水位、流量、水質、気温などのデータを取り込み演算することで設備の運転管理を実現し、安定的な供給量と水質を予測しています。また、日照時間の長さで消毒用塩素の蒸発量が変わってしまうため、気象観測データから注入量の予測も行っています。また、運転教育用シミュレータ機能は、新人教育用としての運転ツールだけでなく、プロセス異常対応の訓練用シミュレーションとしても使われています。

「運転支援装置を活用して、安定した水が作れる一定制御のポイントを見つけていきたいと考えています」(井手氏)

「山武は、導入後1年半が経過しても親身になって対応しアドバイスをしてくれます。今後は長期にわたり場外設備の配水池で漏水の調査や亀裂の補修が行われ、制御や運用が変化し運転管理も難しい時期を迎えます。山武には、今までと同様に最適運用のアドバイスを期待しています」(元村氏)

※2012年3月以前の情報は、旧名称が使われているケースがあります。ご了承ください。

用語解説

※1 沈澱池

水よりも密度の大きな物体(粒子など)は水中で薬品と結合反応を起こし池底に沈澱していく。そのような浮遊物を水から分離する目的で設けられた池。上流から原水を流入させ、下流から清澄水を、また底部から沈澱物を取り出す。

 

お客さま紹介

長崎市上下水道局 手熊浄水場 場長 元村 眞一氏
長崎市上下水道局
手熊浄水場
場長
元村 眞一氏
長崎市上下水道局 手熊浄水場 場長 元村 眞一氏
長崎市上下水道局
事業部
電機係長
井手 智格氏

長崎市上下水道局 手熊浄水場

長崎市上下水道局 手熊浄水場

長崎市上下水道局 手熊浄水場

  • 所在地/長崎県長崎市手熊町277

この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2009年12月号に掲載されたものです。

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