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JNC石油化学株式会社 市原製造所

地震発生時に製造装置を自動停止、従業員と地域全体の安全を確保できる体制を整備

JNCグループ石油化学部門の主力工場として、基礎化学品、機能材料の開発・生産を行っているJNC石油化学株式会社 市原製造所。同製造所では東日本大震災の経験を踏まえた防災対策強化の一環として、地震緊急停止システムを導入。規定以上の地震が検知された際に製造装置を自動停止させることで、従業員と地域全体の安全を確保する体制を整えました。

工場・プラント分野 石油・石油化学 安全・安心 スイッチ/センサ

導入製品・サービス

爆発事故をきっかけに防災、減災への取組みを強化

東京湾に面して広がる京葉臨海コンビナートの一角に位置するJNC石油化学株式会社 市原製造所。各種日用品から自動車部品、家電、建材、繊維など、様々な製品の素材として用いられるポリプロピレン、ポリエチレン、オクタノール、さらには液晶などの機能材料を国内外の市場に供給し、人々の暮らしを支えています。

一方で市原製造所は、防災、減災を最重要テーマとして掲げ、安全対策に力を注いでいることでも知られています。その発端となったのが、今から40年前に同製造所で発生した事故です。

「約2カ月半にわたって操業を停止するという事故でした。以後、事故の教訓を深く胸に刻み、『安全常に』をコーポレートポリシーに据え、全従業員が一丸となって防災、減災に取り組んできました。また、事故を風化させてはいけないということで25年後の1998年に検証ビデオを制作し、事故が発生した日に毎年各部署で必ずこのビデオを見ることにしています」(山田氏)

「昨今、プラントでの事故発生の原因の一つに腐食が挙げられます。当社では防災活動の中で、2005年から、構内に張り巡らされたパイプラック上のすべての配管を少しずつ持ち上げて、配管の裏側を含め外面腐食検査を実施しました。徹底的に不具合を摘出し、必要箇所に修理を施していきました。その結果、東日本大震災(市原市の震度は5弱)の際も、配管類の破損は皆無でした」(美濃氏)

高度な機能と信頼性が採用の大きな決め手に

プラント内に設置された地震制御盤。3重化CPUを備えるなど、信頼性を追求している。3台中2台のセンサが設定値を超えた場合、プラントを緊急停止させる信号が発信される。

プラント内に設置された地震制御盤。3重化CPUを備えるなど、信頼性を追求している。3台中2台のセンサが設定値を超えた場合、プラントを緊急停止させる信号が発信される。

東日本大震災は、市原製造所が持つ懸念点を浮き彫りにしたといいます。

「東北地方の発電所が一斉に停止したために、外部と連携している電力系統の電圧が急低下し、結果的に地震波よりも先に製造所は全設備が緊急停止しました。もし装置が稼働状態であった場合、手動で緊急停止スイッチを押さなければならず、あの地震の揺れの中では非常に困難であったと感じました」(小野氏)

「仮にスイッチを押せる状況だったとしても、製造設備を止めることは、現場従業員に大きな精神的プレッシャーがかかり、一瞬のためらいが生じ、その結果、対応が遅れてしまう可能性もあるわけです」(美濃氏)

市原製造所では、そうした経験を踏まえて防災活動の見直しを実施。今後、起こり得る災害を想定し、より積極的な防災対策に着手しました。その一環として、地震発生を検知し、一定規模以上の場合には確実に製造装置を自動停止できるシステムの構築を検討しました。

「当初は、他メーカーの制御用地震計を導入する予定でした。しかし、展示会でアズビル株式会社の『インテリジェント地震緊急停止システム』を知り、3重化CPUや多数決(2-out-of-3)処理※1、自己診断機能など、信頼性の高い能力を備えている点などを踏まえて、社内で検討した結果、アズビルを採用することにしました」(水野谷氏)

「地震の加速度値(Gal)や震度相当値の計測が可能で、SI値※2による計測に対応している拡張性も大きな魅力でした。また、フィールド機器など数多くのアズビル製品を長年にわたり採用しており、アフターサービスの良さも評価のポイントになりました」(小野氏)

盤面に取り付けられた表示器。各センサが検出した地震情報が表示されている。

盤面に取り付けられた表示器。各センサが検出した地震情報が表示されている。

地震発生時に従業員と地域全体の安全を確保できる体制を構築

市原製造所が、インテリジェント地震緊急停止システムの採用を決定したのが2012年3月。同年5月から1カ月間にわたる定修期間を利用して工事を実施し、主要プラントの操作室にそれぞれ1セットずつ、計3システムを導入しました。設定値以上の加速度を検知するとインターロックが作動し、プラントの製造設備が自動で緊急停止する仕組みを実現しています。

「緊急停止の際は、工場内に放送が流れます。このときに規定値の加速度を検出していないプラントについては、放送を受けたら手動で緊急停止を実行するという運用にしました」(小原氏)

地震緊急停止システムの導入は、市原製造所に大きな安心感を提供しています。

「地震発生時もプラントの停止作業に気を取られることなく、従業員が速やかに身の安全を確保できる体制が整ったことが何よりの成果です。規定以上の揺れが検知されれば、製造装置が自動停止するので、自分の判断で装置を止めてしまうことへの精神的負担も解消されています」(塩谷氏)

市原製造所では、地震緊急停止システムの整備のほかにも、様々な防災対策を強化しています。

「東日本大震災の際には防災カメラが有効だったため、敷地内にある高さ100mの煙突の上に設置された防災カメラの更新、増設を行いました。また、新しい防災指揮車の導入や防災対策本部用の非常用発電機を設置し電源を確保するといった一連の施策を併せて実施しました。当製造所だけでなく、広く地域全体の災害対策にも貢献できる体制を目指しています」(松隈氏)

「今後もアズビルには、持ち前の手厚いアフターサービスにより、当製造所の生産活動における安全・安心をしっかりと支えてくれることを期待しています」(山田氏)

プラント内に分散して設置しているインテリジェント地震センサ SES60(箱内)。3システム設置のため、合計9台のセンサが稼働中。

プラント内に分散して設置しているインテリジェント地震センサ SES™60(箱内)。3システム設置のため、合計9台のセンサが稼働中。

インテリジェント地震センサ SES60

インテリジェント地震センサ SES60

用語解説

※1 多数決(2-out-of-3)処理

システムを三重化し、得られた3つの値のうちどれか1つが違っていても、残り2つが同じ場合にはそちらを採用することで信頼性を向上させる処理。

※2 SI値(Spectrum Intensity)

米国のハウスナー(G.W.Housner)によって提唱され、地震によって一般的な建物にどの程度の被害が生じるかを数値化したもの。

お客さま紹介

JNC石油化学株式会社 代表取締役専務 市原製造所長 山田 敬三氏
JNC石油化学株式会社
代表取締役専務
市原製造所長
山田 敬三氏
JNC石油化学株式会社 市原製造所 管理室 兼 生産技術室 室長 美濃 弘氏
JNC石油化学株式会社
市原製造所
管理室 兼 生産技術室
室長
美濃 弘氏
JNC石油化学株式会社 市原製造所 管理室 次席 小原 弘之氏
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市原製造所
管理室
次席
小原 弘之氏
JNC石油化学株式会社 市原製造所 保全部 部長 小野 芳伸氏
JNC石油化学株式会社
市原製造所
保全部
部長
小野 芳伸氏
JNC石油化学株式会社 市原製造所 保全部 電設担当 次席 水野谷 禎勇氏
JNC石油化学株式会社
市原製造所
保全部
電設担当
次席
水野谷 禎勇氏
JNC石油化学株式会社 市原製造所 環境安全品質部 部長 塩谷 純夫氏
JNC石油化学株式会社
市原製造所
環境安全品質部
部長
塩谷 純夫氏
JNC石油化学株式会社 市原製造所 環境安全品質部 設備保安担当 次席 松隈 明彦氏
JNC石油化学株式会社
市原製造所
環境安全品質部
設備保安担当
次席
松隈 明彦氏

JNC石油化学株式会社 市原製造所

JNC石油化学株式会社 市原製造所

  • 所在地/千葉県市原市五井海岸5-1
  • 設立/1962年6月
  • 事業内容/ポリプロピレン、ポリエチレン、オクタノールなど基礎化学製品、液晶など機能材料製品の開発、生産

この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2014 Vol.1(2014年02月発行)に掲載されたものです。

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