日本クレア株式会社
建物分野 研究所 安全・安心 安定稼働 研究施設向け風量制御システム
導入製品・サービス

最先端医療・医薬品開発に最適な実験動物の管理育成

バリアシステムの中に、バイオバブルを設置した二重バリアによる飼育管理を行っている

バリアシステムでの経口投与試験
医学研究、医薬品開発の世界では、高度に発達した生命科学の新しい技術が、数多く、また幅広く求められています。そうした時代にあって、日本クレア株式会社は、半世紀にわたって、医療・医薬研究の世界で用いられる実験動物に関するノウハウを蓄積してきました。そして、実験動物の繁殖と飼育で培った技術をベースに、高品質の実験動物や飼料の販売、独自の工夫を凝らした飼育器材の販売、各種動物実験の受託業務を行っています。富士宮技術サービスセンターは、同社のそうした経験とノウハウを基盤として設立されました。
「このセンターでは、当社の最も得意とするBS(バリアシステム)飼育システムを基本とし、より確実な微生物統御を行うためのビニールアイソレータ、より簡便に個別にクリーンを維持するためのバイオバブルシステムを設置しています。クリーンな動物実験をこれほど幅広く受託できる施設は日本では初めてのものであり、世界的にも珍しい施設だといえます」(田口代表取締役社長)
高度化する医療・医薬の世界では、さらに精度の高い実験動物が必要とされています。例えば、新たに作出される重要な系統は受精卵で凍結保存され、必要に応じこの凍結卵を融解し、里親に移植し出産・哺育させ、出生日の揃った均一な個体を得ることも可能にしています。この操作においては、最も高い清浄度を求められる里親飼育環境から、里親への移植、出産、哺育へと清浄度のレベルが少しずつ下がっていきます。この施設では清浄度の高い環境に対して、それ以下のエリアからは空気が入り込めないようにすることが、極めて重要となります。こうした環境の最適管理のために、山武のクリティカル環境™システム(現:研究施設向け環境制御システム)が導入されています。
「清浄度の高いエリアから清浄度の低いエリアに向けて、絶えず風が流れることで、汚染空気の逆流を防止していますが、これを安定的に維持することが重要で、山武のクリティカル環境システム(現:研究施設向け環境制御システム)は、高い精度で、これを実現してくれています」(技術部 望月部長代理)
しかも山武の採用しているマニフォールドダクト方式は、メインダクトから分岐されたダクトで状況に応じた排気を行う設備であることから、清浄度を高く保ちながら換気できるようになっており、一般の排気設備に比べて高い省エネルギー効果を発揮しています。
「クライアントから、かけがえのない性質を持ったラットやマウスを預かり、病原微生物の汚染などから守ってより清浄に育て上げなければなりません。システム全体の動きをわれわれも熟知しておかなければ、いざというときに素早い対応が図れません。このため、設計段階から山武の技術者と打ち合わせながら、こちらの要望を伝えつつ、システムについての学習を重ねてきました。きめ細かい設計対応と懇切な教示をしてくれたことは、その後の維持管理に大きく役立っています」(富士生育場 土橋課長)
また、システムが蓄積するトレンドデータをはじめとする各種データは、動物実験施設環境の維持と改善に大きく役立つものとなっています。
「センターの開設に向けて、受託試験部門から、システム技術の担当になりました。クリティカル環境システム(現:研究施設向け環境制御システム)の高度な性能や、同時に導入したセキュリティシステムなどで、山武製品のレベルの高さと扱いやすさを実感しています」(技術部 森川課長)
同センターでは今後、ここで蓄積されるノウハウを、医療・医薬研究からの求めに応じて幅広く提供していくことを考えており、これまでも、数多くの見学者を迎えてきました。
「ここは、最先端の動物実験飼育施設・設備として、いわばショールーム的な働きもしています。今後、ユーザーの求めに応じて、新たな施設構築を行っていく際に、山武の信頼性の高い技術に大いに期待をしたいと思っています」(田口社長)
動物実験施設の制御・管理システムを一括受注して、トータルに技術を提供

天井内に埋め込まれた風量制御バルブ

見学コースに設けられたクリティカル環境システム(現:研究施設向け環境制御システム)の概要
山武がビルディングオートメーション(BA)で培った技術を注ぎ込んだクリティカル環境システム(現:研究施設向け環境制御システム)は、ドラフトチャンバーを用いた実験装置だけではなく、実験動物飼育環境においても、幅広く活用されています。安全、快適、省エネルギーのコンセプトで、無菌などの高い清浄度を維持するとともに、バイオハザードとしても重要な役割を果たしています。
そうした動物飼育環境の清浄と安全を維持するために、換気式飼育ラックによってラック単位で飼育環境を隔離し相互汚染を防ぐシステムを用意しています。また、マニフォールド方式を採用した換気により、飼育ラックの給排気を建物側ダクトに接続して、動物の熱負荷や代謝物質は直接室外に排出し、ラック内の空気を飼育室内に排気しないため、良好な室内環境を保ったまま飼育室の換気量を抑えることで、高い省エネルギー効果を発揮します。
また、富士宮技術サービスセンターでは、薬品や細菌などを扱う検査エリアに安全キャビネットを導入していますが、ここでも、キャビネットのON/OFFによる排気風量の変化に対して、給気風量と排気風量の差を一定に保つことで、室圧バランスを保持して、交差汚染を防ぐ効果を上げています。さらに、飼育環境管理システムでは、飼育室の温度・湿度・圧力などの飼育環境を集中管理するとともに、計測データの解析による飼育改善や環境改善に役立てることが可能です。
山武では、これまで、日本クレア株式会社が医療・医薬関連の研究施設に設備導入を図る際にクリティカル環境実現のための協業を行ってきました。今回、同社が新たに富士宮技術サービスセンターを立ち上げるに際して、クリティカル環境システム(現:研究施設向け環境制御システム)のみならず、建物全体の空調管理からセキュリティシステムに至るまでトータルな設備導入を直接受注し、施工監理からシステム設置、試運転調整に至るまで、一貫した技術提供を行いました。これは、これまでの協業における高い信頼評価に基づくものだったといえます。
※2012年3月以前の情報は、旧名称が使われているケースがあります。ご了承ください。
お客さま紹介

代表取締役社長
田口 福志氏

技術部
部長代理
望月 史宏氏

技術部
課長
森川 美幸氏

富士生育場
課長
土橋 清隆氏
日本クレア株式会社

中央のモニュメント「CLEA no wa」
この記事は「Savemation(セーブメーション)」(現:azbilグループPR誌「azbil」)の2006年08月号に掲載されたものです。