エバラ食品工業株式会社 津山工場
"10年後を見据えたシステム"を念頭に
生産活動を支える新たな付加価値を追求
エバラ食品工業 津山工場では、稼働後15年以上を経た生産監視・制御システムのリニューアルに着手。新たにMESを導入した今回のシステムでは、生産工程におけるさらなる効率性の向上と作業の省力化、"食の安全"の確保を実現しました。今後、将来にわたって生み出される同社の新製品の生産を支える基盤として大いに期待が寄せられています。

エバラ食品工業株式会社 津山工場
工場・プラント分野 食品 品質管理 安定稼働 稼働改善 運転監視・制御システム&ソフトウェア
導入製品・サービス
単なる新システムへの置き換えでなく新たな付加価値の追求を目指す

工場内の中央操作室に設置されたIndustrial-DEO™/MESの監視端末。ここから、各生産ラインの生産状況を確認し、監視・制御を行っている。
「おいしいものを、さらにおいしく」をスローガンに、消費者に愛され、信頼される商品づくりを目指すエバラ食品工業株式会社。「焼肉のたれ」や「すき焼のたれ」「浅漬けの素」など簡便性に優れた調味料に加え、近年では「おいしいキムチ」などチルド食品の分野でも積極的に商品を展開し、常にユニークな着想に立った新商品の開発・提供により、幅広い層から支持されています。
岡山県津山市にある津山工場は、同社の主力製品の生産を中心とした西日本の生産拠点として、全国の市場に対する商品の安定供給を支えています。同工場では以前より、原料の貯蔵から製品の箱詰めに至る生産工程のトータルな自動化を積極的に推進してきており、特に生産の中心となる「仕込み」「調合」「加熱殺菌」の工程においては、1994年の工場操業開始時にいち早くDCS※1を導入。システムによる監視・制御に基づき、生産性、品質の向上を図ってきました。
「稼働後15年以上を経たDCSの老朽化対応と設備の増強を目的に、2007年にシステム更新の検討を開始しました。その際、単純に既存のDCSを新製品に置き換えるというアプローチではなく、これまでの課題も含めて解消しながら、『10年後を見据えたシステムの実現』を念頭に、新たな付加価値を追求していきたいと考えました」(佃氏)
特に、既存のDCSに関しては、工場立ち上げ時に導入したという背景もあり、現場作業員の熟練度が低いことを想定して、操作ミスの防止を主眼に、あえてシステム側での制限を強くするとともに、操作を促すメッセージや注意喚起する警報を多く出力するというポリシーで設計されていました。
「そのため、頻繁にブザーが鳴っている状態となり、常にDCS担当の作業員が必要な状況でした。15年以上の経験を経て、作業員のスキルが向上していることを踏まえ、全員で『考える製造』を目指して、製造現場で作業を行いながらDCSの操作ができるようにシステムを再配置するとともに、より多くの情報を提供し、それに基づく作業員の柔軟な対応が可能となるような新システムの構築が求められていたのです」(三橋氏)
3カ月を要する更新工事を1カ月という短期で完了

事務所に設置されたMES端末。主に生産管理にかかわる担当者が生産の状況を随時参照できるようになっている。
これに対し津山工場では、既存DCSを構築したパートナーでもある山武に依頼し、新システムを構築することを2009年4月に決定。製造設備の監視・制御を担う高信頼オープン・オートメーション・システム Industrial-DEO™を導入する一方、生産設備への指示や実行結果の確認といった現場の作業をサポートするシステム(MES※2)を構築することで、同工場のニーズを満たすことを目指しました。
「何よりも、当工場の生産現場を熟知していることに加え、これまで手厚いサポートによって常に我々の期待に応えてきてくれた実績が、新システムを山武に依頼することにした最大のポイントです。工場から至近の津山市内に山武がサービス拠点を持っていることにも大きな安心感がありました」(茂木氏)
その後、津山工場と山武の両者による詳細な仕様検討を経て、システム構築作業が進められ、2009年末から翌2010年初めにかけての約1カ月を費やして更新工事が行われました。
「もともと山武からは、同規模の工事には3カ月程度を要する旨の申し出があったのですが、当社の生産計画上、1カ月の操業停止が限度でした。そうした我々の厳しい要求を受け入れ、手際の良い対応によって工事を1カ月で完了してくれた山武には大いに感謝しています」(三橋氏)

調合タンクに設置された山武のサニタリー形電磁流量計 MagneW™。これら流量計やコントロールバルブとIndustrial-DEOが連動することで、生産設備の監視・制御が実現されている。

製造現場に設置されたDCS端末。現場作業を行いながらタッチパネルで操作ができるため、現場に居ながらにして製造状況を把握することができる。
原料に関するトレーサビリティを確保するという点でも大きく前進
以上のような経緯を経て、Industrial-DEO/MESを中核とした今回の新システムは、2010年2月から本格稼働を開始。そこでは、同工場が旧システムにおいて抱えていた様々な課題が解消されています。
「監視画面を通じて、各工程の作業員が現在の生産状況を随時確認できる環境が整備されました。この結果、状況に応じた生産設備への指示を、製造現場に設置されたシステムの画面上からタッチパネルで行えるなど利便性も上がり、生産能力の向上にも寄与しています」(西山氏)
新システムの導入により、製造の現場に居ながら工場の稼働状況が把握できるようになりました。今までDCSで監視・制御を行っていた製造現場の作業員の負荷軽減を実現。人員も最適配置することができるようになりました。
「これまで人手で行っていた管理をMES上で電子化できたことも大きなメリットです。例えば、製品の特定ロットで使用された原料をすべて洗い出したり、いつ納品された原料がどの製品の何ロット目に使われたかといったことを調査するのに、手動で個別管理していた従来の環境では1~2時間を要していましたが、今回のシステムでは、それが10分程度で行えるようになりました。"食の安全"という観点で不可欠となる原料についてのトレーサビリティの確保という面でも大きく前進しました」(茂木氏)
このように、生産の効率化、作業の省力化において大きな成果を同工場にもたらした今回のシステムは、今後、エバラ食品工業が次々に生み出していく新商品の生産に向けた基盤としても大いに期待されています。
「そうした意味で、10年とはいわず、15年、20年先を見据えたシステムが構築できたものと自負しています。今後も山武には、当工場の生産活動をともに支えてくれるパートナーとして、様々な提案をお願いしたいと思います」(佃氏)
※2012年3月以前の情報は、旧名称が使われているケースがあります。ご了承ください。
用語解説
※1 DCS(Distributed Control System)
分散制御システム。工場の生産システムなどを集中制御するのではなく、システムを構成する各装置・機器が制御装置を持つ。それらをネットワーク接続し、必要な情報をやりとりして相互監視・制御する。負荷の分散が図れ、安全でメンテナンス性の高いシステム構築が可能。
※2 MES(Manufacturing Execution System)
製造業における受注から製品の製造、出荷に至る生産活動のトータルな最適化を支援するシステム。製造状況の把握や実績の記録のほか、作業の手順の標準化といった局面でも役立てられ、現場作業の効率化や品質向上に貢献する。
お客さま紹介

製造本部
津山工場
工場長
佃 富美男氏

津山工場
製造課
課長
三橋 隆氏

津山工場
業務課
課長
茂木 文男氏

津山工場
生産技術課
係長
西山 雅彦氏
エバラ食品工業株式会社 津山工場

エバラ食品工業株式会社 津山工場
エバラ食品工業株式会社 津山工場
- 所在地/岡山県津山市金井468-1 津山中核工業団地内
- 操業/1994年4月
- 生産内容/「黄金の味」「すき焼のたれ」「浅漬けの素」「キムチ鍋の素」などの調味料
この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2010年08月号に掲載されたものです。