Harmonas-DEO(英文サイトへリンク)
チャンギ DCSプラント
信頼性を徹底追求した監視・制御の強化で
地域内のビル空調の安定稼働を強力に支援
知識集約型企業、ハイテク・ビジネス、金融系データセンターなど、先端ビジネス関連企業が集うシンガポールのチャンギビジネスパーク。地域内の各ビルに空調用の冷水を供給しているチャンギDCSプラントでは、より一層の連続安定供給を目指して設備の監視・制御の強化に着手。使い勝手に優れたシステムの導入により、設備の稼働にかかわる信頼性の大幅な向上を実現しています。

チャンギ DCSプラント
工場・プラント分野 その他(市場・産業) 安定稼働 稼働改善 海外 運転監視・制御システム&ソフトウェア 流量計
導入製品・サービス
冷水供給先の拡大に伴って、監視・制御の強化が課題に
東南アジアのほぼ中心、赤道直下に位置するシンガポールは、古くから東西貿易の拠点として繁栄してきました。特に近年では、その地理的な優位性もあって、日本をはじめ先進国を中心に企業の海外資本の投入も極めて活発に行われており、グローバル規模で見ても最も経済成長の著しい国の1つに数えられています。
そのシンガポールの空の玄関、チャンギ国際空港に隣接する地域において、開発が進められているのがチャンギビジネスパークです。総面積66ヘクタールの敷地内には、既に十数棟のビルが建設されており、主に多国籍企業のハイテク部門、研究開発部門、ハイテク・ビジネス、さらには金融関係のデータ管理部門などが同ビジネスパークでの活動を開始しています。
チャンギDCSプラントは、同ビジネスパーク内各ビルの空調の稼働を支える地域冷房(DCS)※1プラントです。3万冷凍トン(Rt)の冷凍能力を誇る設備から生み出される冷水を地域内の各ビルに常に安定供給しています。同プラントの開発、設置、運営に当たっているKeppel DHCSは、シンガポール最大の地域冷暖房(DHCS※2)プロバイダーとして知られています。 バイオポリスやウッドランドといった国内の主要ビジネスパークにおける地域冷房サービスの供給を行っているほか、国外でも広範にDHCSに関するビジネス展開を積極的に行っています。例えば、2010年5月には中国の企業との契約の下、ジョイントベンチャーを設立し、天津市のエコシティ計画に伴うDHCSプラントの立上げに参画しています。
「当プラントでは、2000年の稼働開始以来、常に地域内のお客さまに安定した冷水を供給するために、冷凍機をはじめとする設備の監視・制御には万全を尽くしてきました。しかし、ビジネスパークの開発が進み、地域に参入する企業が増える中で、2008年ごろから、さらなる監視・制御強化の必要性が切実な課題として浮上してきていました」(NG氏)
24時間365日の連続安定供給には、応答性に優れたサポートが必須

監視室に設置されたHarmonas-DEO。施設内の冷凍機をはじめとする機器の監視・制御がここで一元的に行えるようになっている。
チャンギDCSプラントでは、そうした課題の解消に向け、これまで利用してきた監視・制御システムのリニューアルを念頭に検討を開始。綿密な検討の結果、同プラントが導入を決定したのが、山武のシンガポール現地法人、アズビルシンガポール(ASG)が提案していた監視・制御システムHarmonas-DEO™でした。
「ASGとは、バイオポリスおよびウッドランドの両DCSプラントでもパートナーとして協業してきた経緯があり、その中でHarmonas-DEOをはじめとする製品やサポートに関する品質の高さには大いに満足していました。そのような実績を高く評価したというのが、今回の採用の最大のポイントです」(NG氏)
「特にDCSプラントは、24時間365日の連続安定供給を顧客に保証しなければならず、プラントやシステムの信頼性は、ビジネス的な観点からも最重要の要件になります。ASGなら仮に問題が発生した際にも、最短時間での対応が期待できるという点で、大きな安心感がありました」(TAN氏)

冷水・冷却水の流量を計測する電磁流量計 MagneW™3000。

プラント内に新たに設置した制御盤。冷凍機やポンプなどの補機の制御を行うコントローラが収められている。
データの抽出・加工の容易さが業務時間の短縮に大きく貢献
システムの導入・工事は、2009~2010年にかけて実施。完了分から順次稼働を開始しています。今回構築したシステムでは、資産の有効活用を図るため、既存の監視・制御システムはそのままとし、既存システムで収集した情報をすべてHarmonas-DEO側に送信。さらに、新設の制御機器やコントローラについてはHarmonas-DEOが直接、監視・制御を行う形としました。つまり、プラント内のすべての設備についての監視・制御がHarmonas-DEO上に集約される形となっているわけです。また、設備の二重化などにより、信頼性のさらなる向上も図られています。
「Harmonas-DEOの導入により、監視・制御にかかわる視認性、操作性が大幅に向上しました。また、必要なデータを容易に抽出、加工できることも大きなメリットで、例えばCOP※3などを複数パターンで自動算出するといったことも可能になり、作業時間の短縮に大きく貢献しています。加えてHarmonas-DEOからERP※4で構築された顧客への課金を扱うシステムにデータを送信するような仕組みも実現。そうした連携がたやすく行えることや、高いデータの精度が確保できる点も大いに評価しています」(POH氏)
そのほか、チャンギDCSプラントでは、山武の提供する、マルチクライアント環境での監視・制御を可能にするTSS(Thin client Supervisory Server)サーバー/クライアントも併せて導入。既にHarmonas-DEOが導入されているバイオポリス、ウッドランドの両DCSを加えた3つのプラントで相互に遠隔監視・制御できる形を実現しています。
「例えばチャンギで設備に何らかの異常が発生し、オペレータが現場へと対応に向かうため席を外す場合でも、バイオポリスやウッドランドのオペレータに連絡し、TSSを活用して一時的に遠隔からの監視・制御を依頼するといったことも可能となっています」(POH氏)
今後チャンギDCSプラントでは、ますます増え続けるビジネスパーク内の建物に対し、常に安定した冷水を供給していくための体制、システムをさらに強化していくことになります。また、直近の計画としては、設備や機器の稼働時間や故障履歴から正確なメンテナンス時期を割り出す保守管理システムといった仕組みも構築していきたいと考えており、その局面でもASGの提案に大きな期待を寄せています。
「シンガポールは国を挙げて2020年までに16%のCO2削減を目指しています。DCSプラントは、お客さまのエネルギー削減に貢献する設備ですが、今後はプラント自体の省エネルギーにも徹底して切り込んでいきたいと思います。それに向けて、省エネルギーの分野でもエキスパートであるazbilグループには、持ち前の高度な技術開発力によって我々の取組みを支援していってもらいたいと考えています」(NG氏)
※2012年3月以前の情報は、旧名称が使われているケースがあります。ご了承ください。
用語解説
※1 地域冷房(DCS:District Cooling System)
熱帯、亜熱帯など暖房が不要の地域で、一定地域内の建物群に集中管理された熱供給設備(プラント)から冷水を地下の地域導管を通して供給し、建物内の冷房を行う仕組み。
※2 地域冷暖房(DHCS:District Heating and Cooling System)
一定地域内の建物群に集中管理された熱供給設備(プラント)から冷水、温水、蒸気を地下の地域導管を通して供給し、建物内の冷房、暖房、給湯などを行う仕組み。供給先ビル側で熱源設備を持つ必要がなく、省エネルギーや環境負荷低減の効果が期待できる。
※3 COP(Coefficient Of Performance)
機器に入力されたエネルギーによって、どれだけのエネルギーを出力できるかを数値で示した成績係数のこと。熱源機器の発生熱量とエネルギー消費量との比。
※4 ERP(Enterprise Resource Planning)
企業全体を経営資源の有効活用の観点から統合的に管理し、経営の効率化を図るための手法・概念、およびこれを実現するITシステムやソフトウェア。
お客さま紹介

CEO
JOSEPH NG氏

オペレーション部門
ゼネラルマネージャー
POH TIONG KENG氏

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シニアマネージャー
VICTOR TAN氏
チャンギ DCSプラント

Keppel DHCS Pte Ltd
Keppel DHCS Pte Ltd
- 所在地/48 Changi Business Park Central 2 Singapore 486067
- 設立/1998年
- 事業内容/地域冷暖房施設の開発、敷設、運営
この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2011年06月号に掲載されたものです。