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Eastern Petrochemical Company(SHARQ)

スマートバルブポジショナの導入でメンテナンス性が向上、さらなる生産現場の安全・安心を目指す

サウジアラビアの石油化学会社であるEastern Petrochemical Company(SHARQ)では、エチレングリコールの生産を支えるバルブのメンテナンス性向上を目指し、バルブポジショナを従来のアナログ式から、通信が可能なデジタル式に更新しました。その結果、メンテナンスの作業負荷を大幅に削減。バルブやポジショナの状態を詳細に把握できるようになり、「予知保全」実現に向けての第一歩を踏み出すことができました。

※SHARQとは、アラビア語で「東方」を意味し、同社がサウジアラビア東部州に位置していることと、東方の国・日本との合弁会社であることに由来した愛称です。

Eastern Petrochemical Company(SHARQ)

Eastern Petrochemical Company(SHARQ)

工場・プラント分野 石油・石油化学 安定稼働 稼働改善 海外 コントロールバルブ(調節弁)/操作端

石油化学プラントを支える30年来のよきパートナー

アラビア半島の大部分を占める中東最大の国、サウジアラビア。世界最大の埋蔵量、輸出量を誇る石油資源を産業・経済の要とするこの国は、石油精製、石油化学などの石油関連産業を柱に発展を遂げてきました。

サウジアラビア東部、ペルシャ湾沿いに広がる世界屈指の工業都市・アルジュベール地区で石油化学プラントを操業するEastern Petrochemical Company(SHARQ)は、1981年5月にサウジ基礎産業公社(SABIC)※1とサウディ石油化学株式会社(SPDC)※2の合弁により設立されました。同社のプラントはエチレングリコール、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンという4つの製品を生産し、年間の総生産量は500万トンにも上ります。

中でも、エチレングリコールに関しては、1985年に稼働したプラントであるEG1を皮切りに、1993年にはEG2、2000年にEG3、そして2009年にはEG4と順次、生産設備を拡張しており、現在では世界最大級となる220万トンを生産しています。

このエチレングリコールのプラントのうち、EG1~EG3にはアズビル株式会社のコントロールバルブが採用されています。

「最初となるEG1の運用の中で、アズビル製コントロールバルブの信頼性と耐久性、そして保守部品供給の安定性を高く評価しました。プラントをEG2、EG3と拡張する際も、常にアズビルの製品を採用してきました」(Ali S. Al-Ahmadi氏)

「万一の故障発生時にも、タグナンバーを連絡すると、その製品の納入時期などを踏まえて常に的確なパーツを供給してくれるという大きな安心感もあり、アズビルは我々にとって30年来の信頼できるパートナーとなっています」(Naser A. Al-Mutairi氏)

スマートバルブポジショナの導入でメンテナンス負荷を大幅に削減

砂嵐が吹くような過酷な環境で、安定稼働を続けるアズビルのプレッシャーバランス形ケージ調節弁 CV3000とスマートバルブポジショナ AVP3000 Alphaplus。

砂嵐が吹くような過酷な環境で、安定稼働を続けるアズビルのプレッシャーバランス形ケージ調節弁 CV3000とスマートバルブポジショナ AVP3000 Alphaplus。

SHARQでは、3年に1度実施しているシャットダウンメンテナンス※3のタイミングで、バルブの動きや漏れについて点検を行っています。さらに5年に1度は、バルブを分解して清掃・再組立てを行い新品時の状態に戻すオーバーホールを実施しています。

 一方、日常的な点検は、同社のメンテナンス担当者が現場を巡回し、バルブ外観をチェックすることや、DCS※4からバルブ開度などの動きを確認するという形で対応していました。しかし、外観からの確認では、バルブ内で発生している細かな異常を発見することができません。バルブが動作不良を起こして、生産に影響が出て初めて異常が顕在化するといったケースもありました。

SHARQが抱えるこうした課題を解消するために、アズビルではバルブに搭載されるポジショナを従来のアナログ式から、通信が可能なデジタル式のスマートバルブポジショナ AVP3000 Alphaplus™に置き換えることを提案。それを受けてSHARQでは、2008年にまずEG1で稼働するバルブの約60台にAVP3000 Alphaplusを導入しました。

従来、アナログ式ではスプリングの強さや空気のバランスを取るなど、熟練者でも難しい組付け、調整作業が必要でした。しかし、デジタル式の導入により、ドライバー1本でオートセットアップが可能となり、夏季ともなれば地表温度が50℃を超える過酷な状況におけるメンテナンスの作業性も向上しました。また、スマートバルブポジショナ自機の故障状態や入力、出力レンジ、出力特性などのデジタル情報をアズビルのスマート・コミュニケータ CommPad™(携帯情報端末)に読み込んで、バルブの傍らでその状態を詳細に確認できるようになっています。

「スマートバルブポジショナの導入で、日々のメンテナンスの手間や時間も大幅に削減できました。機器の状態をも逐次把握することができ、バルブの重大な不具合による生産ラインのダウンタイムもなくなりました」(Sultan Saud Al-Otaibi氏)

SHARQではこのような成果を踏まえて、2012年にその第2ステップとして、EG1の残り約70台のバルブについてもポジショナをアナログ式からAVP3000 Alphaplusに置き換えました。

現地法人の設置を契機にさらに踏み込んだ提案を期待

今後SHARQでは、バルブのメンテナンスに要する作業負荷のなお一層の軽減と、生産ラインのさらなる安全・安心の確保を目指して、バルブの不具合の発生を確実に防止できるような仕組みも実現していきたいとしています。

アズビルではスマートバルブポジショナの提案と並行して、調節弁メンテナンスサポートシステムValstaff™の導入をSHARQに提案し、採用が決定しました。このシステムを導入することで、スマートバルブポジショナの付いたバルブ本体の情報をValstaffにて収集し、機器の診断、メンテナンスに必要な意思決定なども迅速かつ確実に行えるようになります。また、過酷な環境である現場に行かなくてもコントロールルームに居ながらにして現場機器の状態を確認することができます。SHARQでは、今後のValstaffの導入に先立ち、システムの前提となるスマートバルブポジショナへの交換を、EG1以外のプラントでも着々と進めているところです。

「当社が考える『予知保全』の実現には、Valstaffはまさに最適な製品だと考えます。バルブの状態をモニタリングし、劣化の進み具合を開放点検することなく知ることができるので、オーバーホールの回数を削減できるといったメリットも大いに期待されます」(Sultan Saud Al-Otaibi氏)

またSHARQでは、アズビルが2012年秋に予定しているサウジアラビアでの現地法人設立にも大きな期待を寄せています。

「新法人設立を機に、バルブメンテナンスセンターが整備され、パーツの供給スピードの向上やより一層のサービスの拡充など、きめ細かい対応を期待します」(Naser A. Al-Mutairi氏)

「何よりも、我々の身近に拠点が設置されれば、これまで以上に私たちのニーズに合った提案をしていただけると期待しています。アズビルには、ぜひ今後もよきパートナーとして、当社の生産活動を一層力強く支援していってもらえればと考えています」(Ali S. Al-Ahmadi氏)

用語解説

※1 SABIC(Saudi Basic Industries Corporation)

サウジアラビア最大級の石油化学会社。石油化学分野では、世界大手10社のうち1社に数えられる。

※2 SPDC(Saudi Petrochemical Development Corporation)

サウジアラビアの石油化学産業育成を支援するために、1979年に三菱商事株式会社、三菱油化株式会社(当時)、三菱化成株式会社(当時)をはじめとする産業界各社の出資により調査会社として発足。1981年日本政府の支援を得て、日本のナショナル・プロジェクトとして投資会社の体制を整えた。

※3 シャットダウンメンテナンス

各種生産施設やプラントで定期的に実施される大規模な点検・修理作業。一定期間プラント全体を停止し、実施される。

※4 DCS(Distributed Control System)

分散制御システム。プラント・工場の製造プロセスや生産設備などを監視制御するための専用システム。構成する各機器がネットワーク上で機能を分散して持つことで、負荷の分散化が図れ、安全でメンテナンス性に優れている。

お客さま紹介

Eastern Petrochemical Company(SHARQ) Maintenance & Technical Support General Manager Ali S. Al-Ahmadi 氏
Eastern Petrochemical Company(SHARQ)
Maintenance & Technical Support
General Manager
Ali S. Al-Ahmadi 氏
Eastern Petrochemical Company(SHARQ) Electrical & Control System Dept. Manager Naser A. Al-Mutairi 氏
Eastern Petrochemical Company(SHARQ)
Electrical & Control System Dept.
Manager
Naser A. Al-Mutairi 氏
Eastern Petrochemical Company(SHARQ) Electrical & Control System Dept. EG Control System Superintendent Sultan Saud Al-Otaibi 氏
Eastern Petrochemical Company(SHARQ)
Electrical & Control System Dept.
EG Control System
Superintendent
Sultan Saud Al-Otaibi 氏

Eastern Petrochemical Company(SHARQ)

Eastern Petrochemical Company(SHARQ)

Eastern Petrochemical Company(SHARQ)

  • 所在地/Al-Jubail Industrial City, Kingdom of Saudi Arabia
  • 設立/1981年5月
  • 事業内容/エチレングリコールなどの石油化学製品の生産・販売

この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2012 Vol.8(2012年10月発行)に掲載されたものです。

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