サントリーグループ
各拠点の電力消費量の"見える化"がサントリーグループの省電力に貢献
「低炭素企業」を目指し、日夜取組みを推進するサントリーグループ。同グループでは、先の東日本大震災に伴う夏季の電力需給対策として発令された節電要請を受け、工場をはじめとする拠点の電力消費に関する"見える化"に着手。可視化された情報に基づく節電対策を展開することで、お客さまに商品をお届けするためにどういう状況であっても操業し続けるという課題をもクリア。さらに今後の省電力に向けた様々な"気づき"を得ることができました。

サントリーグループ
工場・プラント分野 食品 省エネルギー 運転監視・制御システム&ソフトウェア 調節計(温調計)/記録計
導入製品・サービス
工場における節電対策が経営上の緊急テーマとして浮上
ウイスキーやビール、ワインなどの酒類、ウーロン茶や缶コーヒーをはじめとする清涼飲料など、消費者の日々の生活を彩る商品の提供をミッションに事業を展開するサントリーグループ。「人と自然と響きあう」を企業理念に自然環境との共生に向けた地球環境の保全活動に長年にわたって注力してきたことでも知られます。サントリーグループは、環境に調和した生産活動を行う工場を「エコファクトリー」と呼んでいます。とりわけ地球温暖化防止への取組みを省エネルギー活動を通じて徹底しています。さらにCO2排出量の少ない燃料への転換や再生可能エネルギーの利用などを推進し、様々な角度から地球温暖化防止に取り組んでいます。
そうした「低炭素企業」を目指す取組みの一環として、サントリーグループでは、生産拠点や主要オフィスビルなどにおける電力消費動向の"見える化"に着手。その直接の契機は、東日本大震災後に夏季の電力需給対策として発令された電気事業法第27条による電気の使用制限でした。
「27条の発令を受けて、東京電力管内の契約電力500kW以上の大口需要家が今夏の電力使用量を昨夏比で15%削減することが義務付けられることとなり、当グループでもその適用を受ける、特に工場における節電対策が経営上の緊急のテーマとして浮上してきていました」(桂田氏)
「以前から環境中期目標でのCO2排出量削減の要請もあって、電力消費量をリアルタイムに把握するための仕組みを整備している工場もありましたが、全社で見ると完全な状態ではなく、本社機構側から各工場の消費動向を統合的にモニタリングするような仕組みもありませんでした。そこで、電力消費量を全社共通で"見える化"するためにリアルタイム性のある電力需給監視システムの導入が不可欠であると考えました」(中田氏)
計装システムからの電力情報を既存の社内イントラネットで通信

ENEOPTpersで全拠点の電力消費動向を確認することで、個々の工場やオフィスだけではなく、それら拠点間にわたる電力使用の調整など、グループ共同スキームを活かした対応もスムーズに行える。
そこで、サントリーグループが導入を決定したのが、山武の提供する電力需給最適化支援パッケージENEOPT™pers(エネオプトパース)でした。
「山武とは、グループ内の工場における生産設備の領域で長年にわたる付き合いがあり、今回、ENEOPTpersを紹介されたのもその関係からでした。我々がENEOPTpersを知った段階では、既に約1カ月後に27条による電力使用制限が発令されることが決まっており、それ以前の稼働開始を前提にその導入を進めることを決めました」(中井氏)
ENEOPTpersの一般的な導入形態としては、中央に専用のサーバマシン、各拠点には山武の計装ネットワークモジュール NXを設置し、既設電力監視盤から受電電力量、発電電力量などのデータを取り込んでサーバ側に送信。その電力情報を基にWeb経由で各拠点の電力消費動向を可視化するというものですが、サントリーグループでは、NXとENEOPTpersのサーバ間でやりとりする情報をグループ内で業務用ネットワークとして運用されているイントラネットに取り込み通信しています。さらに、ENEOPTpersサーバについても専用のマシンを導入するのではなく、サーバ仮想化環境※1で構築されている同社の業務用サーバ上で1つのゲストシステム※2として稼働させるという先進的な形態がとられました。
「その狙いとしては、既存のハードウェアやソフトウェアライセンスの有効活用、さらにはサーバマシンの追加に伴う運用負荷の増大を回避したかったことなどが挙げられます」(中井氏)
生産に全く影響を与えず節電を達成
こうしたシステム上の工夫を行いながら、サントリーグループにおけるENEOPTpersは、導入時計画していた東京電力管内の9つの工場のほか、同管内の3つのオフィスビル、研究所も加えた計12拠点を結んで、当初の予定どおり7月1日以前に稼働を開始しました。それにより、各工場、オフィスのエネルギー担当者や本社機構側の経営層が随時、自らの拠点を含む全社的な電力消費動向をWeb画面上でリアルタイムに閲覧できる環境が整いました。その後、接続拠点は26にまで拡大されています。
法令で電力消費のピークと設定されている9~20時の時間帯の削減目標値を15%に置き、これに対して2~5%のマージンを設定して、電力消費がその値に達した際には、関係者に対しアラームメールを自動送信するといった仕組みも構築。速やかに対応措置がとれる体制も整備されています。
「ENEOPTpersの画面については、山武にカスタマイズを依頼して、全拠点が一覧できるサマリ画面を追加してもらいました。それも含め、その操作性、視認性は非常に優れており、現場や経営層からも高く評価されています」(中井氏)
「法令が定める前年比で15%の電力削減という目標を、生産に全く影響を及ぼすことなく、全期間にわたってクリアすることができました」(中田氏)
サントリーグループでは、今回導入したENEOPTpersをベースとして、今後も各拠点の電力監視を継続的に行っていくことになります。そうした中で、各拠点の契約電力に対して実際の消費動向がどの程度であるかといったことが詳細に把握できるようになりました。
「さらに、今夏、ENEOPTpersの"見える化"をベースに節電対策を実施したことで、例えば工場であればラインの動かし方、オフィスであれば空調の温度設定など、どこでどういう工夫を行えば、どの程度の電力節減につながるといった、様々な"気づき"が得られました。これまでは工場ごとにこのような"気づき"に対処してきましたが、今回、グループで取り組む体制を構築したことに大きな意味がありました。今後は省エネルギーの取組みはもちろんのこと、以前からサントリーグループが目指してきた『低炭素企業』実現という経営課題に向けた取組みをさらに強力に推進していきたいと考えています」(桂田氏)
※2012年3月以前の情報は、旧名称が使われているケースがあります。ご了承ください。
用語解説
※1 サーバ仮想化環境
1台のサーバコンピュータをあたかも複数台のコンピュータであるかのように論理的に分割し、それぞれに別のOSやアプリケーションソフトを動作させることができる環境。
※2 ゲストシステム
サーバ仮想化環境の基盤上で動作するOSやアプリケーションソフトを含むシステム。
お客さま紹介

技術開発本部
生産技術部
部長
桂田 州啓(くにひろ)氏

技術開発本部
生産技術部
課長代理
中田 誠亮(まさあき)氏

技術開発本部
生産技術部
中井 伸行氏
サントリーグループ

サントリービジネスエキスパート株式会社
サントリービジネスエキスパート株式会社
- 本社所在地/東京都港区台場2-3-3
- 設立/2009年4月1日
- 事業内容/総務、生産技術、情報システムなどサントリーグループ共通の専門サービスの提供など
この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2011年12月号に掲載されたものです。