藤田エンジニアリング株式会社
植物工場ソリューションの提供を支える
柔軟性に優れた計測・制御システムを構築
藤田エンジニアリングでは、昨今、大きな話題を呼んでいる植物工場のためのソリューション提供を念頭に、自社敷地内において実験棟の建設に着手。植物の栽培に適した環境を棟内で維持するための計測・制御システムの実現に、山武の計装ネットワークモジュールを採用し、その構築や検証にかかわる工数を大幅に削減。柔軟性に富んだシステムを実現しています。

藤田エンジニアリング株式会社
工場・プラント分野 その他(市場・産業) 安定稼働 稼働改善 調節計(温調計)/記録計
植物工場の実験棟建設に、ネットワーク計装を採用
ビル設備、産業設備、そして環境設備の開発・設計から施工・メンテナンスまで幅広い事業を展開する藤田エンジニアリング株式会社。空調や給排水、電気設備などにかかわる高度な計装技術力とノウハウで、北関東を中心とした地域における「快適空間」の創造・維持に貢献しています。そんな同社が、次代の成長分野と期待を寄せ、現在、積極的に取組みを進めているのが植物工場※1ソリューションの提供です。
「長年クリーンルームの施工について豊富な実績を積み重ねてきており、そこで培ったノウハウを活かす形で、数年前から植物工場の企画・設計・施工に向けた取組みに着手しています。以来、社内の研究開発室において栽培実験を継続的に行う一方、2010年2月に竣工した宇都宮大学様の『サステーナブルビレッジ』内にある植物工場『Plant Factory』の設計施工も担当しました」(野口氏)
そうした植物工場ソリューションの提供に向けた取組みをさらに強化させるため、藤田エンジニアリングでは、2010年6月、本社敷地内に植物工場の実験棟を建設することを決定。その設計に当たって、プラント内の温度調節をはじめとする各種制御を行うためのコントローラとして採用したのが、山武の提供する計装ネットワークモジュール NXでした。
「以前から、ビル設備、工場設備を問わず、山武の製品を数多く採用してきたという経緯もあり、山武には信頼性という点で大きな安心感を抱いていました」(野口氏)
「特に今回、NXを採用する決め手になったのは、何よりも構成のしやすさです。マルチポート入力で植物の栽培において不可欠な、温度や湿度、培養液の水素イオン濃度(pH)や肥料濃度などの信号を同時収集して計測、制御が行えるほか、NXのコントローラ自体も非常にコンパクトです。汎用のLANケーブルを使って既存のネットワークを介し、通信が行えるという点には非常に大きな利点を感じました」(村上氏)

植物工場実験棟内の制御盤に設置された計装ネットワークモジュール NX。実験棟内の温度、湿度などの環境情報を収集し、汎用LANケーブルで中央監視システムと通信を行う。

事務所に設置された植物工場用の中央監視システム。ここから実験棟内の様子をはじめ温度、湿度などの状態を随時監視、閲覧できるようになっている。
プログラミング不要で工数の大幅な削減が可能に
約3カ月の期間を費やして建設された実験棟は、2010年10月に稼働を開始。床面積20m2の棟内には、面積当たりの栽培効率を上げるために植物が上下2段に並べられ、棟内の温度や湿度、あるいは液肥は、NXを中心に構築された計測・制御システムによって、常に植物にとって最適な状態に保たれています。また、光合成に必要な光についても、建物の屋根や囲いを覆っているポリカーボネートを通して太陽光を採り入れているほか、日照時間の短い時季には照明を点灯。さらに、壁面には太陽光を採り入れるための反射板を取り付け、その時々の日射角度に応じて、反射板を自動で上下左右に動かして必要な光量を確保するといった工夫も施されています。
「通常、PLC※2を使ってこうした計測・制御の仕組みを構築するには、複雑なプログラミングが不可欠で、多大なコストと時間、そして高度なスキルを要します。これに対してNXでは、専用の画面でパラメータを設定していくだけという簡単な操作により、スキル要らずで同様のことが実現可能です。NXではPLCに比べておよそ5分の1程度の工数でエンジニアリングが可能で、保守性の高さも考え合わせれば、劇的な生産性の改善が図れているものと実感しています」(村上氏)
併せて、社屋内の開発室と実験棟内のNXおよびWebカメラを無線LANでつなぐことにより、実験棟内の様子をはじめ温度、湿度などの状態を中央監視システムで随時閲覧できるほか、WAN※3経由で関係者の自宅などから遠隔監視できる仕組みも実現されています。また、必要に応じて照明や空調を遠隔操作することも可能です。さらに、実験棟内の状況は常時記録されており、栽培期間の植物の成長度合いと実験棟内の環境との関係を分析するといったことも可能です。
「中央監視システム自体は、自社で開発したものですが、基となるデータはすべてNXからネットワークを介して収集しています。開発に当たっては、受け取っているデータがプログラム的に処理されたものかどうかを確認するための作業も必要ですが、NXではそうした作業をPC上からパラメータの設定を確かめるだけで容易に行え、開発作業の大幅な簡素化が図れました」(相川氏)

実験棟内の湿度を計測している室内型湿度センサ ネオスタット™(上)と、室内温度、CO2濃度、溶液温度を制御するデジタル指示調節計 SDC25(下)。

実験棟内のファンコイルユニットに設置されている電動弁 ACTIVAL™(アクティバル)。
植物工場以外の広範な分野にも適用の可能性は大きく広がる
藤田エンジニアリングでは、実験棟の稼働後、小松菜や水菜、ホウレンソウ、リーフレタスといった植物の栽培を順次行い、様々な観点からの検証を進めてきました。今後は、蓄積してきた効率的な植物栽培についてのノウハウなども含め、実験棟での成果を実際の栽培にフィードバックしながら、野菜などの安定供給を目指す農業団体やスーパー、ファミリーレストランなどを中心とした顧客に対して、植物工場ソリューションをさらに積極的に提案していきたいとしています。
「NXを組み込んだ形でパッケージ化し、植物工場ソリューションとして提案していくといった方向性も非常に有力な選択肢だと捉えています。NXにタッチパネルなどを搭載して、現場で栽培する作物を選択し、それに応じてプラントを自動制御できるような仕組みも実現できればと考えています」(村上氏)
「さらに、計測・制御システムの構築を簡単かつ柔軟性の高いものにさせてくれるというNXの魅力は、植物工場だけでなく、ビル設備や産業設備、環境設備といった、当社の事業の中でトータルに活かしていけるものと考えます。山武には、そうした広範な局面でのNXの活用に向けた積極的な提案を大いに期待しているところです」(野口氏)
※2012年3月以前の情報は、旧名称が使われているケースがあります。ご了承ください。
用語解説
※1 植物工場
安全かつ安定的な食料の供給を目的に、内部環境をコントロールした空間で植物を計画的に生産するシステム。
※2 PLC(Programmable Logic Controller)
パソコンや専用の入力装置を利用して、制御内容をあらかじめプログラムによって表現し、それを逐次実行することによりシーケンス制御を行う装置。
※3 WAN(Wide Area Network)
広域通信網。電話回線や専用線を使って、地理的に離れた場所にあるコンピュータ同士を接続し、データのやりとりをすること。
お客さま紹介

工事本部
設備工事部
部長
野口 達也氏

技術本部
技術開発センター
技術開発課
担当課長
村上 仁氏

技術本部
技術開発センター
技術開発課
係長
相川 みゆき氏
藤田エンジニアリング株式会社

藤田エンジニアリング株式会社
藤田エンジニアリング株式会社
- 所在地/群馬県高崎市飯塚町1174-5
- 設立/1964年10月
- 事業内容/ビル設備、工場設備、環境設備などの開発・設計、施工・メンテナンス
この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2011年05月号に掲載されたものです。