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関西国際空港 浄化センター

上中下水道施設の監視制御システムを更新。
空港島の水インフラに関する安全・安心を実現

開港以来18年にわたり、関西圏の空の玄関口として、人・モノの交流や経済活動を支えてきた関西国際空港。同空港では、空港島内の各施設から発生する排水の高度処理・再生を担う浄化センターの中央監視制御システムの更新を実施。浄化センターから離れた場所に位置する汚水中継ポンプ場や上水給水ポンプ場などの各設備を新たに監視制御対象に取り込むことで、機器故障の予測やトラブル対応の迅速化を実現しました。

関西国際空港 浄化センター

関西国際空港 浄化センター

工場・プラント分野 上・下水道 安全・安心 運転監視・制御システム&ソフトウェア

関西圏の空の玄関である空港島の水インフラを管理

大阪湾泉州沖を埋め立てて建設された関西国際空港は、日本唯一の4,000m級の複数滑走路を備え、完全24時間運用が可能な空港です。国際線・国内線合わせて年間で約1,400万人が利用し、約70万トンの貨物が取り扱われ(いずれも2011年度実績)、関西圏における空の玄関の役割を担っています。今話題のローコストキャリア(LCC)※1に関しても国内最多の9社(2012年5月現在)が乗り入れており、現在、LCC専用ターミナルも建設中(2012年度下期に供用開始予定)で、今後、一層の発展が期待されています。

関西国際空港は、「公害の無い、地域と共存共栄する空港づくり」を原点として、環境と共生し、持続的発展可能な「人と自然にやさしい」空港となるべく取り組んでおり、2012年5月にはACI※2グリーンエアポート審査員特別賞を受賞しました。その取組みの1つとして空港島内の各施設から発生する排水の高度処理・再生を担うのが浄化センターです。

「各施設からの生活排水は島内19カ所に設置した中継ポンプ場を経由して、ポンプによる圧送と自然流下を繰り返しながら浄化センターに集められ、瀬戸内海環境保全特別措置法などで厳密に定められた水質基準をクリアするように浄化します。浄化された処理水は、植栽への散水やトイレの洗浄水などに中水として再利用しています」(髙田氏)

関西国際空港では、2005年ごろから、開港以来稼働させてきた浄化センターの中央監視制御システムの更新に向けた検討を開始しました。

「監視制御設備では経年劣化により故障発生率が高くなってくるとともに、部品供給期限が迫るなど課題が持ち上がっていました。仮に故障で監視制御機能が停止すれば、排水処理が行えなくなります。これにより、空港機能に多大な影響を及ぼすことが想定されることから、早期の更新が求められていました」(大野氏)

24時間上中下水道施設を運用しながら移行を実施

TSSの導入により、浄化センター内の現場電気室、さらには本土側の上水給水ポンプ場などセンター外でもノートPCなどのクライアント端末を使ってIndustrial-DEOの中央監視・制御画面を閲覧、操作できる。

TSSの導入により、浄化センター内の現場電気室、さらには本土側の上水給水ポンプ場などセンター外でもノートPCなどのクライアント端末を使ってIndustrial-DEOの中央監視・制御画面を閲覧、操作できる。

2009年11月に更新工事を請け負うベンダーを公募。初期導入コストと導入後10年間の維持管理(保守メンテナンス)コストも含めた競争入札の結果、アズビル株式会社が選定されました。

「アズビルは関空内の施設を熟知していることから、現状の監視制御施設の問題点も認識しており、改善点の提案も期待どおりのものでした」(古長氏)

その後、1年以上の期間をかけてシステムの設計作業が行われ、2011年7月から実際の更新工事が進められました。

具体的には、中央監視制御システムをアズビルの提供する高信頼オープン・オートメーション・システム Industrial-DEO™に更新し、これまでも監視対象になっている浄化センター内の流量調整槽や沈殿槽、各種処理槽に加え、新たに島内に点在する、計19カ所の汚水中継ポンプ場、3カ所の厨房除害施設や空港島から4kmの連絡橋で結ばれた、対岸りんくうタウン内の上水給水ポンプ場などの設備も監視対象として取り込みました。また、浄化センター内の中央監視室に設置されていたグラフィックパネルも今回の更新で3台の大型LCD※3に置き換え、監視制御にかかわる情報の可視性、操作性の大幅な改善を図りました。

「上中下水道施設は24時間運用のため、全面的にシステムや設備を停止して工事を行うことはできません。運用しながら各設備を1週間程度で順次移行していくという工程を組み、作業を実施しました。さらに、更新時に頻度が多く発生する電源のON/OFFにより、既存設備に悪影響を与える可能性があるため、それを避けるために予備電源を使うなど、安全にシステム移行するための様々な施策をアズビルが提案してくれたおかげで、トラブルも一切なく、スムーズに移行を完了することができました」(武山氏)

中央監視室に設置された中央監視制御システムIndustrial-DEO。対岸にある給水ポンプの運転状態も一元監視している。大型のLCDが3台採用され、視認性が向上した。

中央監視室に設置された中央監視制御システムIndustrial-DEO。対岸にある給水ポンプの運転状態も一元監視している。大型のLCDが3台採用され、視認性が向上した。

トラブル対応の迅速化と故障発生の予兆検知が可能に

2011年10月にすべての設備の移行が完了。浄化センターの中央監視室で設備を集中管理できる体制が整いました。

「従来は、ポンプ場などで機器故障などが発生すると、自動で中央監視室に電話がかかり音声メッセージで警報発生が伝えられる仕組みでしたが、実際にどんなことが起こっているのかは、担当者が現場に駆け付けてみなければ分かりませんでした。現在は、中央監視室で常時、すべての設備や機器の状況を把握できるため、仮にどこかで警報が発生すれば、その詳細を中央監視制御システム上で確認して、必要な対処を検討し、準備を整えて現場に駆け付けることが可能となっています」(仙波氏)

設備や機器の常時監視が可能になったことで故障発生の兆候を未然にキャッチし、いち早く必要な措置をとれるようになりました。また、アズビルのTSS(Thin client Supervisory Server)サーバ/クライアントを導入することで、中央監視室から離れた上水給水ポンプ場からも、中央監視室で監視操作しているのと同じ画面を見て状況を確認しながら対応できるようになったことも、今回の更新の大きな成果だと関西国際空港では捉えています。

現在、関西国際空港では、LCC専用ターミナルの建設を進めていますが、それに伴い2期島にも順次、汚水中継ポンプ場が設置されていくことになります。

「この計画も踏まえて、アズビルには、より広範囲にわたる設備を分かりやすく管理できるように、中央監視制御システムの画面なども十分に工夫を凝らして設計してもらっています。そうした意味では、2期島への対応に関する不安もありません」(大野氏)

「今後もアズビルには、万一の際のトラブル対応やシステムの維持管理などの場面も含めて、我々の設備の長期にわたる安全・安心を、その持ち前のノウハウと技術力でしっかりと支えていってくれることを期待しています」(髙田氏)

用語解説

※1 ローコストキャリア(Low Cost Carrier)

運航効率の向上やサービスの簡素化などによって運航費用を低く抑制し、低価格で航空輸送サービスを提供する航空会社。

※2 ACI(Airports Council International)

世界の空港管理者約580社から構成される機構。

※3 LCD(Liquid Crystal Display)

液晶組成物を利用した平面状で薄型の視覚表示装置。いわゆる液晶パネルディスプレイ。

 

お客さま紹介

関西国際空港株式会社 施設管理部 設備グループ リーダー 髙田 博実氏
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施設管理部
設備グループ
リーダー
髙田 博実氏
関西国際空港株式会社 施設管理部 設備グループ サブリーダー 大野 秀基氏
関西国際空港株式会社
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サブリーダー
大野 秀基氏
関西国際空港施設エンジニア株式会社 ターミナル施設部 機能設備保全課 主任 古長(こちょう) 隆氏
関西国際空港施設エンジニア株式会社
ターミナル施設部
機能設備保全課
主任
古長(こちょう) 隆氏
住重関西施設管理株式会社 運転管理部 電気保全課 課長代理 武山 雄二氏
住重関西施設管理株式会社
運転管理部
電気保全課
課長代理
武山 雄二氏
住重関西施設管理株式会社 運転管理部 運転管理課 係長 仙波 慶和氏
住重関西施設管理株式会社
運転管理部
運転管理課
係長
仙波 慶和氏

関西国際空港 浄化センター

© 関西国際空港株式会社

関西国際空港

  • 所在地/大阪府泉佐野市、泉南郡田尻町、泉南市
  • 開港/1994年9月4日

この記事はazbilグループのPR誌azbil(アズビル)の2012 Vol.7(2012年08月発行)に掲載されたものです。

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